我が国の医療費は増加の一途をたどっており、多くの国では、安価な後発医薬品(GE)による医療費削減政策が進められている。しかしながら、我が国では先発医薬品への信頼性が高く、GEの普及は諸外国と比較して遅れている。一方、米国では先発医薬品の特許期間中に先発医薬品企業の許可を得て、外観、成分、添加物などが同一のGEを上市できるオーソライズド・ジェネリック(AG)が存在する。AG販売企業は、先発医薬品企業から特許の許諾を得る必要があるため、通常のGEに対する潜在的なネガティブイメージに対応でき、患者や医師などの使用者から高い信頼性があるとみなされる可能性がある。近年、我が国でもAG制度が導入されている。そこで本研究では、GEの推進を目的として、地域の異なった調剤薬局に処方箋を持参した患者を対象にGEの希望、AGの認知度および選択についての調査を行った。調査対象者は、2023年6月1日から7月31日にコスモファーマ株式会社の調剤薬局(関東および東北圏)に処方箋を持参した20歳以上の患者とした。その結果、GEを希望しない者が15.7%(106/675)、AGを知っている者が6.1%(41/675)であった。また、GEを希望しないがAGであれば変更しても良い者が50.0%(53/106)となった。地域の比較では、GEを希望しない者とAGを認知している者が関東で有意に多かった(p=0.015, p<0.001)。したがって、都市部に対応したGE普及の新たな政策の構築が必要と推察された。前述の通り、AGはGEの使用に抵抗を感じている患者に対しても推奨しやすいと考えられるが、認知度は低かった。しかし、薬剤師がAGの適切な説明を行うことで、地域に関係なく先発医薬品を希望する患者の50.0%(53/106)がAGであればGEに変更しても良いと回答したため、AGの認知度を高めることは、GEの使用を推進させる1つの手段である可能が推察された。一方で、AGを認知しても約80%の60代以上の高齢者が先発医薬品を希望しており、推進の方法の再考が必要であると考えられた。