アプライド・セラピューティクス
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18 巻
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 石村 淳, 布川 結菜, 油井 信明
    2023 年 18 巻 p. 47-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー
    糖尿病治療薬として知られるインスリン製剤の自己注射注入器は、治療上の安全性・有用性のほかに患者の使用性・簡便性に配慮することが求められ、改良が進んでいる。しかしながら、握力低下など使用者側の問題で適正に注入操作を行うことが困難なことも考えられ、製剤と注入器の両面から適切な薬剤選択を行う必要性がある。そこで、本研究では握力の違いがインスリン注入時間に及ぼす影響について検討した。薬学部4年生を対象として利き手の握力測定し、4種類のペン型注入器(フレックスタッチ®: FT、フレックスペン®: FP、ミリオペン®: MP、ソロスター®: SS)を用いて、インスリン8単位の注入ボタンを押してから薬液の注入が終了するまでの時間を計測した。さらに、NDBオープンデータを用いて、各注入器の処方数量も算出した。その結果、4種類の注入器のうち3種類(FP、MP、SS)で握力が弱い程、注入時間が長いことが明らかになった。また、NDBオープンデータの結果からFTは、製剤数が最も少ないにも関わらず最も多く使用されている注入器であった。本研究結果から、握力の違いにより複数の注入器において注入時間に有意な差が生じることが明らかとなったが、どの注入器においてもインスリン8単位で0.2-0.3秒程度の差であり、この注入時間の違いが治療効果に直接影響を与える可能性は低いと推察された。しかしながら、注入時間保持に影響を与える因子は握力のみではないため、個々の患者に合わせた指導が重要である。
  • 秋山 滋男, 宮本 悦子, 毎田 千恵子, 堀 祐輔, 土井 信幸
    2023 年 18 巻 p. 1-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/03
    ジャーナル フリー
    視覚障害者が点眼薬の適正な使用方法を理解し、アドヒアランスを維持するためには、 医薬品製造販売業者が提供する販促品の視認性への工夫や点字情報などの提供が推奨される。本研究では特に医療用点眼薬の医薬品製造販売業者を対象に、視覚障害者が適正に点眼薬を使用するための服薬支援に関する市場調査の実施や販促品などの商品開発状況について医薬品製造販売業者(44社;回答29社)へ意識調査を行った。 結果、アンケート回収率は 65.9%(29/44社)であった。開発中の点眼薬の使用感について、ユーザーの意識調査を実施している医薬品製造販売業者は12社(41.3%)あり、医師や薬剤師などの医療関係者のほか、患者およびその家族に対して実施していた。また、14社(48.3%)が点眼容器に貼付する服用方法に関するシールや点眼薬使用時の補助具などの販促品を作成していた。加えて、意識調査を行っていない医薬品製造販売業者と比較して意識調査を行なっている医薬品製造販売業者では販促品を作成している割合は有意に高かった。
  • 石村 淳, 問註所 英明, 中須賀 博隆, 町田 充
    2023 年 18 巻 p. 9-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/13
    ジャーナル フリー
    がん悪液質は、体重減少、食欲不振、倦怠感といった患者の quality of life(QOL)を低下させる症状と強く関連し、さらに、抗がん剤への忍容性の低下やがん性疼痛などにも関与しており、予後を悪化させる因子である。また、がん悪質液の進行には、抗がん剤や放射線療法の副作用である味覚障害や口内炎などが関与していることが考えられている。なかでも、味覚障害は、抗がん剤の使用患者の半数以上で生じる副作用であるが、致命的な副作用ではないことや治療成績に直接的な影響を及さないことなどから重要視されておらず、依然、有効な治療・対処法は確立されていない。がん悪液質に対しての有効な治療法は、2021年4月にアナモレリン塩酸塩が承認されるまで存在しなかった。アナモレリンの薬理作用は、グレリン受容体に作用して脳下垂体での成長ホルモン(GH)の放出と視床下部での食欲亢進による筋肉量および体重増加作用と考えられている。一方で、アナモレリン塩酸塩は新薬のため、使用患者数も少なく薬剤に関する情報は添付文書やインタビューフォームに限られる。そこで、今回、がん悪液質を発症した進行膵臓がん患者の味覚障害がアナモレリン塩酸塩の投与により改善し、QOLの向上を認めた症例を経験したため報告する。
  • Atsushi Ishimura, Yutaka Shimizu, Ayano Onishi, Naohiro Yabuki, Yoshik ...
    2023 年 18 巻 p. 16-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/15
    ジャーナル フリー
    Magnesium oxide, a low-price laxative without a habit-forming tendency after long-term use, is widely used for treating constipation in Japan. However, its use has been associated with hypermagnesemia in patients with impaired magnesium excretion function such as renal insufficiency. Therefore, in this study, we investigated the use of magnesium oxide tablets, which may be administered to the elderly on a long-term basis. We found the total number of prescriptions has increased year by year and exceeded 4 billion tablets in FY 2020. The use and number of prescriptions were highest among individuals in their 80s, and more than 70% of patients taking the drug are aged 70 years or older. Since the elderly experience physiological functional decline, pharmacists must make effective use of not only age but also laboratory data listed on prescriptions when dispensing these medications in order to prevent adverse events.
  • Junji Sakurai, Taiga Ishikawa, Shinsuke Sato, Tomoko Takahashi, Fumiyo ...
    2023 年 18 巻 p. 22-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー
    Hyperlipidemia is a risk factor for arteriosclerotic disease. Fibrates have been used as therapeutic drugs for hyperlipidemia. Pemafibrate, a novel fibrate, is a selective peroxisome proliferator-activated receptor α modulator that is prescribed to patients with renal dysfunction owing to its unique metabolism and excretory profiles. However, there is limited information on its use in patients with renal dysfunction, which is a risk factor for adverse events in these patients. This study investigated the effect of administering 0.1 mg of pemafibrate once daily to dyslipidemic patients with chronic kidney disease (CKD) that had progressed to stages G3b or G4. A total of six patients were included in this study and a comparison of clinical laboratory data before and after 12 months of pemafibrate administration was performed. The effects of pemafibrate on triglyceride (TG), aspartate aminotransferase, alanine aminotransferase (ALT), lactate dehydrogenase, creatine kinase, serum creatinine, uric acid, hemoglobin A1c levels, and estimated glomerular filtration rate were examined. Of all the measured parameters, TG and ALT levels decreased over time, but there was no clear effect on the other parameters. These results show that once-daily 0.1 mg pemafibrate can be a potential treatment option for patients with CKD. However, the study needs to be extended to a larger population to validate the findings.
  • 岩﨑 綾乃, 眞島 崇, 眞野 祥子, 村瀬 由貴, 稲垣 範子, 田中 結華
    2023 年 18 巻 p. 29-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/22
    ジャーナル フリー
    電子付録
    医療系学生が抱く「医療コミュニケーション」に対する考え方を明らかにするため、摂南大学における多職種連携教育の一つである「患者コミュニケーション」講義での、薬学部3年生と看護学部2年生の受講前後のコミュニケーションに関する認識について調べた。受講対象者に記述式のアンケート調査を行い(2018、2019、2021年度)、記述内容をKH Coderを用いてテキストマイニング解析した。なお、アンケートは個人名を特定できないよう無記名とした。本科目は、教員による講義の後、薬学部と看護学部合同班で症例を通じたロールプレイ(服薬状況、患者状態の確認)を行い、気づいた点を討議・発表する演習形式で行った。なお、授業は、2018、2019年度は対面形式、2021年度は遠隔形式で行われたことから、アンケートの解析は授業形式で分けて行った。「医療コミュニケーションで大事なこと」について、受講前は薬学部学生では「相手」「伝える」、看護学部学生では「相手」「傾聴」が、すべての年度で共起する言葉として抽出された。薬学部では「薬剤師の服薬指導」のイメージがあり、看護学部では臨床実習で「患者と接した経験」に基づくものと考えられる。受講後は薬学部ではいずれの年度でも「共感」が挙げられた。「講義後に意識出来るようになった点」として、対面講義で行われた2018 - 2019年度では両学部ともに「見る」が、2021年度では「表情」が挙げられた。授業が対面あるいは遠隔形式の違いにより、意識する点が異なると考えられるが、講義後はいずれも「相手」を意識する傾向であった。薬学部、看護学部のそれぞれの学生はコミュニケーションに関して互いに異なる視点をもっているが、合同演習を通じてそれぞれの認識に触れ、自身の振る舞いが相手にどのような影響を与えるのかについて、気づけるようになり、患者の理解、患者情報の把握や医療従事者間の信頼関係構築における具体的行動について認識ができたと考えられる。
  • Atsushi Ishimura, Mayumi Tomizaki, Yoshitsune Yamato, Yoshikazu Matsud ...
    2023 年 18 巻 p. 42-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/22
    ジャーナル フリー
    The medical costs in Japan are rising owing to an increasing number of aged population and advances in medical technologies. Thus, there is an urgent need to reduce the ever- increasing medical costs while ensuring a high quality of medical care. Many countries adopt a policy for suppressing medical costs by promoting the usage of generic drugs that are less expensive than branded drugs. The present study investigated the effect of the recently introduced authorized generic (AG) system in Japan on the patients’ preference in switching the branded product of rosuvastatin, one of the first-line treatment for dyslipidemia drugs, either to the AG or non-AG products in a community pharmacy, Funabashi, Chiba. The results showed that 64.3% of the respondents preferred to use generic drugs, and those who preferred to use branded drugs were significantly older than those who preferred to use generic drugs (p=0.004). After the pharmacists’ counselling patients about AG and non-AG (standard) generic drug, 60% of patients who initially chose the branded product switched to AG drug. In conclusion, pharmacists’ adequate guidance and awareness to patients about AGs and non-AG (standard) generic drug may promote the use of generic drugs.
  • 石村 淳, 油井 信明
    2023 年 18 巻 p. 53-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー
    麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎(ムンプス)といった流行性ウイルス感染症は、ワクチンによって予防可能な感染症である。医療従事者は感染性病原体に曝露する機会が多く、自らが感染源となる可能性があることから、自らの感染症に対する免疫を確認することが重要である。しかしながら、医療従事者だけでなく医療機関で長期臨床実習を行う医療技術者養成機関の学生も様々な患者に接することから注意が必要である。そのため、日本薬科大学では実務実習直前の4年次に流行性ウイルス感染症とB型肝炎の抗体価の検査を行っている。 2021年度から2023年度の日本薬科大学薬学科の新4年生全員を対象とした健康診断時の流行性ウイルス感染症とB型肝炎の抗体価を確認した。 流行性ウイルス感染症の抗体価を有する学生の割合は、水痘が80-90%と最も多く、風疹およびムンプスは35-50%程度であった。一方、麻疹(20%程度)やB型肝炎(0-3%)に対して十分な抗体を持っている学生はほとんどいなかった。 水痘の抗体が高い理由は、感染力とワクチンの定期接種が影響から感染による自然免疫が考えられた。その他の抗体価の低い結果は、一次ワクチン不全(ワクチン接種をしても抗体が得られない)と二次ワクチン不全(接種後の年次経過と共に一度獲得した免疫が減衰する)などの可能性が考えられた。また、B型肝炎においては、日本のワクチンの使用目的が関与している可能性が推察された。しかしながら、薬学生の流行性ウイルス感染症およびB型肝炎の抗体保有状況は良好とは言い難いため、医療関連感染対策として、ワクチン接種率の向上は重要であり、本人の意思に任せるだけでなく、薬学部としてもワクチン接種を促す活動が重要であると考えられた。
  • 石村 淳, 市川 大介, 吉田 亮平
    2023 年 18 巻 p. 59-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー
    我が国の医療費は増加の一途をたどっており、多くの国では、安価な後発医薬品(GE)による医療費削減政策が進められている。しかしながら、我が国では先発医薬品への信頼性が高く、GEの普及は諸外国と比較して遅れている。一方、米国では先発医薬品の特許期間中に先発医薬品企業の許可を得て、外観、成分、添加物などが同一のGEを上市できるオーソライズド・ジェネリック(AG)が存在する。AG販売企業は、先発医薬品企業から特許の許諾を得る必要があるため、通常のGEに対する潜在的なネガティブイメージに対応でき、患者や医師などの使用者から高い信頼性があるとみなされる可能性がある。近年、我が国でもAG制度が導入されている。そこで本研究では、GEの推進を目的として、地域の異なった調剤薬局に処方箋を持参した患者を対象にGEの希望、AGの認知度および選択についての調査を行った。調査対象者は、2023年6月1日から7月31日にコスモファーマ株式会社の調剤薬局(関東および東北圏)に処方箋を持参した20歳以上の患者とした。その結果、GEを希望しない者が15.7%(106/675)、AGを知っている者が6.1%(41/675)であった。また、GEを希望しないがAGであれば変更しても良い者が50.0%(53/106)となった。地域の比較では、GEを希望しない者とAGを認知している者が関東で有意に多かった(p=0.015, p<0.001)。したがって、都市部に対応したGE普及の新たな政策の構築が必要と推察された。前述の通り、AGはGEの使用に抵抗を感じている患者に対しても推奨しやすいと考えられるが、認知度は低かった。しかし、薬剤師がAGの適切な説明を行うことで、地域に関係なく先発医薬品を希望する患者の50.0%(53/106)がAGであればGEに変更しても良いと回答したため、AGの認知度を高めることは、GEの使用を推進させる1つの手段である可能が推察された。一方で、AGを認知しても約80%の60代以上の高齢者が先発医薬品を希望しており、推進の方法の再考が必要であると考えられた。
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