失語症研究
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原著
語聾を伴った外傷性失語の長期経過
能登谷 晶子鈴木 重忠倉知 正佳木下 昭古川 仭
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1990 年 10 巻 3 号 p. 198-204

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抄録

頭部外傷により語聾を伴った重度感覚失語の1例に,発症2年から7年目まで言語治療を行いその成績を検討した。症例は発症時34歳,右利きの男性である。転落による脳挫傷で血腫除去術を受けた。CTでは左上中側頭回と中前頭回領域を中心とした低吸収域と水頭症を認めた。発症後2年目から3年目までは,読話を併用しての単語,音節の聞き取り練習を行った。その結果,読話を併用した単語の聴認は20%から85%まで改善した。聴覚だけによる聞き取りは0%から約40%に向上した。次に喚語困難の改善を目標に書字訓練を行った。その結果,喚語困難は7%から約90%へと著しい改善を示した。本例の経過から,自然治癒期間を過ぎたと思われる語聾であっても長期的には質的な改善を示す場合があることと,失語を伴った語聾でも訓練によって読話能力や喚語困難が改善する例のあることがわかった。以上より,症例によっては長期にわたる言語治療の必要性を強調した。

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© 1990 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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