失語症研究
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原著
「道具の強迫的使用」の症候とその特徴
前田 真治長澤 弘頼住 孝二佐山 節子荻野 裕
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1991 年 11 巻 3 号 p. 187-194

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抄録

    道具の強迫的使用をきたした左前大脳動脈領域の梗塞5例と,右前大脳動脈領域の梗塞1例の計6例を観察した。「道具の強迫的使用」の現象として,従来の報告に加え,以下の特徴を追加した。
     (1) 手と顔や口の間の協調運動現象の有無は症例により異なる。
     (2) 視覚や触覚のみならず頭の中で想像するだけでも誘発された。
     (3) 通常はみられなくても誘発肢位により道具の強迫的使用が誘発される。
     (4) 症状は一過性のものだけでなく長期に症状が残存する例もあった。長期残存例の共通所見として,病的把握現象,重度運動麻痺が残存し,脳梁膝部を含む広い病巣をもっていた。
     (5) 患側手に意志に無関係で無目的な pill-rolling 様の動きを認めたが,動きには Parkinson 病にみられるような一定の傾向はなかった。
     (6) 右前頭葉損傷により左手に道具の強迫的使用現象のある例を認め,病的把握現象が出現していた。

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© 1991 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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