失語症研究
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原著
語義理解障害を中核症状とする超皮質性感覚失語の3例
松田 実水田 秀子原 健二熊倉 勇美
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1993 年 13 巻 4 号 p. 279-287

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抄録
語義理解障害を中核症状とする超皮質性感覚失語の3症例を報告した。 3症例とも fluent な自発語, 良好な復唱, 喚語困難, 単語レベルでの理解障害, 仮名よりも漢字に強い失読失書を呈した。3症例の言語症状の特徴は表出・受容の両面にわたる語彙レベルでの著明な障害に対して, 言語の音韻的側面や統辞的側面が保存されていることであった。表出のみならず, 理解においても語彙と統辞は分離可能な言語能力であると考えられ, 著者らの考案した syntax 理解カテストを紹介した。また, 語彙判断課題の成績より, 症例1の語義理解障害は心内辞書の語彙目録そのものが不安定になっていることによると考えられ, 症例2, 3の語義理解障害とは性質が異なることが示唆された。さらに, 病巣の分析により, 持続する語義理解障害には両半球性病巣の果たす役割が大きいのではないかと考えられた。
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© 1993 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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