失語症研究
Online ISSN : 1880-6716
Print ISSN : 0285-9513
ISSN-L : 0285-9513
原著
聴覚的理解検査の検討
—失語症構文検査, SLTA, トークンテストを用いて—
中嶋 理香洞井 奉子松井 明子中村 光濱中 淑彦
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 13 巻 4 号 p. 323-329

詳細
抄録
聴覚的理解力を知る目的の検査について, それらの類似性を検討した。用いた検査は失語症構文検査 (聴覚的理解) (以下 A-T) , 標準失語症検査 SLTA「聞く」の項目 (以下 S-T) , トークンテスト (以下 T-T) の下位項目である。 これらの検査の下位項目の成績を変数とし, クラスター分析法を用いて検討した。対象は失語症と診断された48名 (平均年齢 59.2 ± 12.4, 全例右利き, 右片麻痺 12例, 麻痺なし 36例, 発症後平均 18ヵ月, 脳梗塞 34例など) 。得られた樹系図から, 下位項目は第1, 第2クラスターを形成する項目およびクラスターを形成しない項目の三つに分けることができた。第1クラスターは, A-Tのレベル1, S-Tの単語理解, T-TのA項目でいずれも単語レベルの意味理解に関連する項目であった。第2クラスターは, T-TのA項目以外の項目であった。クラスターを形成しない項目は, A-Tのレベル2, レベル3, レベル4, 関係節項目, S-Tの短文の理解, 口頭命令項目であった。この結果から, 3つの検査はそれぞれ異なった特徴をもち, ひとつの検査を他の検査で代用することはできないことが示唆された。
著者関連情報
© 1993 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
前の記事 次の記事
feedback
Top