失語症研究
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原著
Visual static agnosia を伴う連合型視覚失認の1例
大山 博史北條 敬斉藤 雅一三浦 順子玉田 聖子目時 弘文
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1993 年 13 巻 4 号 p. 330-337

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抄録
典型的な連合型視覚失認を呈し, visual static agnosia (Botez ら, 1967 ; 以下 VSA) を伴う1例を報告した。症例は74歳男性, 右利き。脳梗塞後に6ヵ月以上持続する連合型視覚失認を生じ, 左上四半盲, 相貌失認, 純粋失読, 色名呼称障害, 地誌的失見当および軽度記銘力障害を合併した。視覚認知障害では, 患者の頭部を固定し物品を非日常的な角度で呈示すると, 視覚性呼称障害が著しく悪化する傾向を認めており, VSA が顕著であった。 MRI では両側後頭側頭葉領域を中心とした, 両側下縦束を含む病巣を認めた。本例の連合型視覚失認の発現は, 両側後頭—側頭視覚投射系 (腹側経路) の機能障害によるものと考えられた。また文献的考察を含めた検討により, VSA の発現には従来から重視されている膝状体外視覚系の機能による代償作用に加え, 外側膝状体視覚系から連続する後頭—頭頂視覚投射系 (背側経路) の機能による代償作用が一因をなしている可能性が示唆された。
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© 1993 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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