失語症研究
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シンポジウム
麻痺性構音障害
廣瀬 肇
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1994 年 14 巻 2 号 p. 121-128

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抄録

    脳損傷に伴う話しことばの障害のうち,神経障害に基づく構音動作の異常に由来することばの音 (speech) の障害を一般に麻痺性構音障害と総称する。麻痺性構音障害の頻度は失語症に比較してもかなり高いことが知られている。本稿では主として麻痺性構音障害の診断・評価の問題を取り上げて概説する。
    麻痺性構音障害においてことばの音の異常の有無については比較的簡単に指摘できる。したがって問題はその異常の定性的および定量的な表現の方法にある。従来行われていることばの音の評価法は次のように分けられる。すなわち, (1) 聴覚 (聴覚印象) 的評価, (2) 音声学的評価および, (3) 音響分析である。このうち聴覚 (聴覚印象) 的評価法として臨床の現場でよく用いられる方式は,あらかじめ設定した評価項目について,その有無や程度を評点化するものであり実用性が高い。これに対して最近では評価の客観性を高めるために音響分析が導入されつつあり,今後の実用化が期待されている。
    一方麻痺性構音障害のもう一つの評価法として構音動態の解析が試みられている。従来の方法としてはX線マイクロビーム方式が用いられ,有用なデータが得られているが,装置の維持や放射線の曝射などの点で問題があり,現在では磁気記録装置などの応用が進められつつある。
    麻痺性構音障害の評価にはこれらの方法を有機的に統合して進めていくことが望まれ,今後の発展

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© 1994 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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