失語症研究
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原著
モーラ指折り法によって顕著な発話改善を呈した aphemia の1例
會澤 房子相馬 芳明中島 孝吉村 菜穂子大槻 美佳
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1994 年 14 巻 4 号 p. 258-264

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抄録
モーラ指折り法によって顕著な改善を呈したaphemiaの1例を報告する。症例は 61歳,男性,右利きで,右手のしびれ感で発症。 MRIで左中心前回皮質・皮質下に限局した梗塞巣を認めた。初診時 (発症後1ヵ月) の言語症状 : 発語は自発・復唱ともに非流暢で抑揚に乏しく,努力性・断綴性が強い。音の置換,歪み,音・音節の繰り返しが著明。訓練結果 : 訓練開始1年3ヵ月後から28~40音節文の音読にモーラ指折り法を導入した。その結果,以下のような変化がみられた。1.努力性緩和,断綴性の減少,10音節以上の音連結が可能,2.音の誤り,音・音節の繰り返し等の減少,3.指折り後,指折りなしで同一文を言わせると指折り時同様音の誤り減少,構音速度が増大。考察 : 指折りによって体性感覚その他のルートによる発話の駆動が発話を改善させた可能性がある。
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© 1994 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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