失語症研究
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シンポジウム
失行・失認と awareness
種村 留美
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1995 年 15 巻 2 号 p. 157-163

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抄録
拮抗失行症例における離断された awareness と視覚失認の症例における awareness の低下を作業療法の立場から検討した。拮抗失行の症例に対し Luria の機能再編成の観点から言語的行動調整を行なった結果,左手動作の制止が可能となり,日常生活動作が自立し,職業復帰も可能となった。この改善は自らの発声による言語命令が Wernicke 野を通じてフィードバックされ,左頭頂葉で運動企図と統合されたためと考えられた。左半球で生じた意図的動作に拮抗する右半球の過程を抑えることが必要であった。次に相貌失認などさまざまな視覚失認を呈した症例に対し,視知覚機能を高めるため activity を行ない改善が得られた。本症例では運動覚により視覚認知の機能再編成が行なわれたと考えられた。また視覚認知障害の性質と潜在的認知過程との関連について絵の呼称に関するプライミング実験を行なった結果,形態的表象から意味的表象を導くレベルに障害があることがわかった。
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© 1995 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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