1995 年 15 巻 2 号 p. 192-197
脳血管障害により病態失認 (AG) ないし身体パラフレニア (SP) を呈した 21例 (右病変 19例,左病変 2例) について,病変部位,症候の発現様式,背景因子,随伴症候を検討した。症候の内訳では,AG のみが8例,AG に SP を伴うものが 12例,患肢の喪失態に SP を伴うものが1例であった。 AG は,右病変では頭頂葉を中心とした広範な皮質・皮質下病変や視床病変で生じる例が多く,左病変では,視床・基底核~後方皮質下病変で失語の軽度な例に生じた。 SP を伴う例では,病変の広がりがより広範囲であった。AGは,患側の上下肢に同程度に出現する例が多いのに対し,SP では,患側上肢の特に前腕以下にみられる例が多かった。特に SP を伴う例では,高齢者,女性が多く,重度の片麻痺と知覚障害,同名性半盲,脱抑制などを高頻度に伴い,症候が長期間持続する例が多く,機能的予後は不良であった。