失語症研究
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原著
下前頭回弁蓋部から中心回の萎縮により aphemia を呈した緩徐進行性失語症の一例
目黒 文大野 司相馬 芳明
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1995 年 15 巻 4 号 p. 299-305

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抄録

左下前頭回弁蓋部から中心回の萎縮により aphemia を呈した症例を報告した。症例は69歳の右利き男性で,7年ほど前から徐々に発話の流暢性が失われてきた。神経学的には言語障害のほかには右片麻痺などの異常を認めず,見当識や病識および礼節は保たれ,人格変化や社会的行動異常も認められなかった。 WAIS-R は VIQ 86, PIQ 101, TIQ 93 と正常であった。自発語は非流暢な努力性の発話で,一貫性のない音の歪みや音韻性錯語とプロソディー障害が顕著であるにもかかわらず,喚語は良好であった。 SLTA では聴理解と読解はほぼ正常,書字は文レベルで軽い障害が認められるにすぎない。本例は7年の長期にわたり知的機能がよく保たれているうえに軽度の非流暢型失語にとどまっており, Weintraub と Mesulam (1990)が提唱した原発性進行性失語 (PPA) の典型例と考えられる。

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© 1995 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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