失語症研究
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シンポジウム
失語症状の長期経過
佐野 洋子加藤 正弘小嶋 知幸
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1996 年 16 巻 2 号 p. 123-133

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抄録

発症後 2 年半以上経過を観察した失語症例 90 例の SLTA 成績と脳の画像診断所見を比較検討した。中大脳動脈還流域がほぼ全域損傷されている広範病巣例による比較検討の結果,SLTA 成績到達レベルはすべての言語モダリティーで,発症年齢による有意な差異が認められ,若年齢発症例は機能回復の可能性が高年齢発症例に比べ高いことが示唆された。広範病巣若年発症例における改善傾向は,病初期から単語レベルの理解力を中心に出現しその後,短文の意味理解,語の想起,仮名の処理能力にも改善を示すが,難度の高い聴覚的理解課題や文復唱課題では困難を残す。広範病巣の高年齢発症例では,すべての言語様式で重篤な障害を残すが,とくに仮名の処理機能の回復は難しい。また語聾症状や構音失行症状も残存しやすい。これらのことから,失語症の機能回復には,発症年齢が関与すること,言語機能により機能回復への冗長性が異なることが示唆された。

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© 1996 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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