失語症研究
Online ISSN : 1880-6716
Print ISSN : 0285-9513
ISSN-L : 0285-9513
16 巻 , 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
教育講演
  • 黒田 洋一郎
    1996 年 16 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    リハビリテーションなどによる機能修復は,獲得機能に対するニューロン回路の再構築であり,成熟脳では新しいシナプス形成過程と機能再学習の2つの過程を必要とすることを述べた。機能再学習のためには,繰り返し刺激をはじめとする記憶・学習効果をあげるような方法が有効なことは経験的にも知られている。活動依存性(activity-dependent)の可塑性という概念は,シナプスの関わる記憶をはじめとする脳高次機能の獲得や修復・維持のメカニズムの基本概念といえよう。この活動依存性を担う分子の1例を紹介したが,このような研究が発展すれば,再生・機能修復を促進する薬や新しい手法の開発に役立つことが期待される。
シンポジウム
  • 植村 研一, 山鳥 重
    1996 年 16 巻 2 号 p. 121-122
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
  • 佐野 洋子, 加藤 正弘, 小嶋 知幸
    1996 年 16 巻 2 号 p. 123-133
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    発症後 2 年半以上経過を観察した失語症例 90 例の SLTA 成績と脳の画像診断所見を比較検討した。中大脳動脈還流域がほぼ全域損傷されている広範病巣例による比較検討の結果,SLTA 成績到達レベルはすべての言語モダリティーで,発症年齢による有意な差異が認められ,若年齢発症例は機能回復の可能性が高年齢発症例に比べ高いことが示唆された。広範病巣若年発症例における改善傾向は,病初期から単語レベルの理解力を中心に出現しその後,短文の意味理解,語の想起,仮名の処理能力にも改善を示すが,難度の高い聴覚的理解課題や文復唱課題では困難を残す。広範病巣の高年齢発症例では,すべての言語様式で重篤な障害を残すが,とくに仮名の処理機能の回復は難しい。また語聾症状や構音失行症状も残存しやすい。これらのことから,失語症の機能回復には,発症年齢が関与すること,言語機能により機能回復への冗長性が異なることが示唆された。
  • 石合 純夫
    1996 年 16 巻 2 号 p. 134-142
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性期まで続いた半側空間無視の改善について,比較的長期間観察しえた症例群を対象として,代償と回復の側面から検討した。無視の回復としては,左方探索の出現と病識の獲得が重要である。左方探索の出現により,抹消試験のような探索課題は改善するが,多くの場合,注意の右方偏位が残っており,線分二等分試験や花の絵の模写など,単一対象の左側に無視が見られることが多い。また,刺激密度の高い日常生活場面でも無視が見られる。病識の出現に伴い,左側の対象を健側に移して処理したり,指摘された誤反応に対する修正を行うといった代償反応も見られるようになる。一方,言語性知識による代償は,病識出現前に見られることもある。半側空間無視は,慢性期に入ってからでも徐々に改善することが多く,また,代償反応による日常生活への適応も起こることから,6ヵ月以上にわたる長期リハビリテーションを考慮してもよい場合が少なくない。
  • 小山 善子, 鳥居 方策, 今井 昌夫, 玉井 顕
    1996 年 16 巻 2 号 p. 143-152
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
        相貌失認は熟知している人の顔を視覚的に同定できない状態であるが,報告例により臨床症状や病巣 (損傷側) に違いがみられ,近年その非均質性が指摘され,統覚型,連合型,記憶連合型相貌失認として論じられている。相貌失認の経過についても臨床分類とは無関係でありえない。自験例3例と文献例から相貌失認の経過を検討してみた。症例Iは両側後頭葉梗塞による連合型相貌失認,症例IIは両側後頭葉出血性梗塞,症例IIIは右PCA領域の梗塞により統覚型相貌失認を呈した。
        結果は,
        1) 両側後頭側頭葉内下部の損傷は一般に,相貌失認は重度で,持続的な経過をとる。
        2) 右側一側損傷で生じた相貌失認は,右後頭葉内側部(area 18 およびarea 19 を含む) 広汎に侵され下縦束,脳梁一部にもおよぶ損傷は持続性で,損傷が前記より小さく, area 18, area 19 の下部を含み外側に位置するものは一過性で1年以内に相貌失認は改善された。
  • 河村 満, 溝渕 淳
    1996 年 16 巻 2 号 p. 153-162
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    自験3例の検討から純粋失読の回復に関わる脳内機構について考察した。症例1は慢性期に 仮名 にほぼ選択的な障害を示した。症例2は慢性期に 漢字 にほぼ選択的な障害を示した。症例3は発症8年後には日常レベルでは読字障害が消失していた。これら3症例について慢性期に失読症状の詳細を検討した。症例1は,仮名音読で顕著な文字数効果を示したが,漢字音読では画数効果はみられなかった。また漢字の意味判断の成績はきわめて良好であった。症例2では,仮名音読で軽度ながら文字数効果がみられ,漢字音読では顕著な画数効果がみられた。症例3では,仮名音読・漢字音読ともに非失読対照例より反応時間が延長した。以上から純粋失読の回復には1)文字の運動覚性記憶を媒介とするなぞり読みによる代償(仮名に有効)と,意味系を媒介とする代償(漢字に有効)との2つがあると考えた。また日常的には失読が消失しても質的障害は残存するものと思われた。
  • 志田 堅四郎, 松本 富枝, 内田 忠
    1996 年 16 巻 2 号 p. 163-171
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
        炭塵爆発で急性一酸化炭素中毒に罹患した比較的重症の24例を30年間観察した。受傷時平均年齢36歳である。 10年後から20年後まで軽快傾向を示したが,20年後から30年後までには加齢も加わって,悪化してきた。 30年後の平均年齢は66歳である。 しかしその悪化は4ヵ月後の程度を越えない。
        この4ヵ月後の程度を越えて悪化してきたときはCO中毒以外の合併症を併発した可能性があった。後遺症の程度は急性期の意識障害の持続時間に相関した。症状の回復では,より高次な機能の回復は遅れ,病巣に関連する症状は残りやすかった。より低次な症状は早く固定した。
        症状の悪化は残存症状に関連して起こった。また日常生活で絶えず体験的に自己の誤りに気づきfeed backの効く症状は治りやすく,効かない症状は治り難く,また悪化する場合もあった。
  • 今村 陽子
    1996 年 16 巻 2 号 p. 172-178
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/25
    ジャーナル フリー
    頭部外傷例の記憶障害について長期経過における回復要因を考察した。対象は,受傷時および急性期に意識障害を伴っていた頭部外傷例で,1年以上を経過した時点で知的機能評価が必要とされた 11例である。言語性の即時記憶と中間期記憶に関連する5単語即時再生,5単語の5分後再生,数唱問題,数唱学習の4項目を検討した。病巣についてはCTあるいはMRIで同定した。 7例が記憶障害を訴え,全例5単語の5分後再生が低下していた。4例には記憶障害の訴えがなく,5単語の5分後再生は正常範囲の成績であった。前者の病巣部位は左側頭葉が3例であり,禰漫性病巣が4例であった。言語性の記憶障害は左側側頭葉が病巣として関連を持っているが,長期経過の中で回復の見込まれる病巣は,左側側頭葉後方外側皮質であり,左側側頭葉前方,内側面で皮質および皮質下に病巣が広がる病態では回復が困難であった。
  • 鹿島 晴雄
    1996 年 16 巻 2 号 p. 179-187
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    左前頭前野領域の梗塞を有する症例の11年にわたる経過と症状を紹介した。発症1年目は発動性低下や易疲労性とともに, “頭の切り替えがうまくできない” “二つのことをしようとすると,片方のことが頭からなくなってしまう” “言葉がなかなか浮かんでこない” などの訴えがみられ, working memory の障害によるものと考えられた。発症4年目に簡便 Attention Process Training を10週間実施し,以後,発動性の改善と社会的外向が認められるようになる。発症11年目の現在,なお軽度の強迫傾向と, “頭の切り替えがうまくできない” “几帳面すぎる日課をたて,臨機応変ということがない” “自分の行動に関し何も決められないのは困る” などの訴えが認められる。本稿では,これらの訴えを “ひとつの基準 (セット) への固執” として解釈しうることを述べ,その要因としてセットの転換障害 (高次の保続) と情報の組織化の障害を指摘した。
原著
  • 倉持 裕子, 長谷川 啓子, 山本 弘美, 河村 満
    1996 年 16 巻 2 号 p. 188-196
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    Wernicke 野 (左上側頭回後部) の梗塞性病変により典型的 Wernicke 失語を呈した2症例の読字・書字障害を検討した。小学校1~3年生で学習する教育漢字一文字およびそれに対応する仮名語,ならびに仮名一文字 (清音46字) の音読と書き取り検査を施行した結果,2症例とも,漢字・仮名のいずれにおいても音読のほうが書き取りより良好であった。漢字・仮名語の音読・書き取りいずれにおいても,課題字 (正答字) と音韻が類似した誤りが多く認められた。これは, Wernicke 失語の口頭言語における特徴である “音韻の選択障害” と “音韻の聴覚的処理障害” が,文字言語においてもみられたものと考えられた。仮名一文字の書き取りにおいても2症例は類似した傾向を示し,正答字に余分な文字を付け加えて書く反応 (付加反応) が多くみられた。書き取りにおける付加反応は, Wernicke 失語の口頭言語での特徴である, “流暢な多弁傾向” を反映しているものと考えられた。
feedback
Top