失語症研究
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シンポジウム
相貌失認の長期経過
小山 善子鳥居 方策今井 昌夫玉井 顕
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1996 年 16 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

    相貌失認は熟知している人の顔を視覚的に同定できない状態であるが,報告例により臨床症状や病巣 (損傷側) に違いがみられ,近年その非均質性が指摘され,統覚型,連合型,記憶連合型相貌失認として論じられている。相貌失認の経過についても臨床分類とは無関係でありえない。自験例3例と文献例から相貌失認の経過を検討してみた。症例Iは両側後頭葉梗塞による連合型相貌失認,症例IIは両側後頭葉出血性梗塞,症例IIIは右PCA領域の梗塞により統覚型相貌失認を呈した。
    結果は,
    1) 両側後頭側頭葉内下部の損傷は一般に,相貌失認は重度で,持続的な経過をとる。
    2) 右側一側損傷で生じた相貌失認は,右後頭葉内側部(area 18 およびarea 19 を含む) 広汎に侵され下縦束,脳梁一部にもおよぶ損傷は持続性で,損傷が前記より小さく, area 18, area 19 の下部を含み外側に位置するものは一過性で1年以内に相貌失認は改善された。

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© 1996 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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