1996 年 16 巻 3 号 p. 250-253
標準高次動作性検査は,通常の失行症以外に,左手の失行,拮抗失行,使用行動,道具の強迫的使用, “kinetic melody” の障害などをも検出可能であり,使い方しだいでかなり広汎な領域をカバーしうる内容を有している。一方,失行と失語の関係については,口部顔面失行の場合においてもっとも問題となるけれども,それ以外の観念運動失行,観念失行と失語の関係も,常に考慮されねばならない。両者の関係についてはさまざまな説があるが,筆者としては,失語と失行とを支える神経基盤は,一部オーバーラップするところがある可能性は否めないものの,原則としてそれぞれ別個の機構に依拠しているのではないかと考える。