失語症研究
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16 巻 , 3 号
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ワークショップ:失語症の言語治療
A.失語症言語治療プランの立案
  • 種村 純
    1996 年 16 巻 3 号 p. 208-213
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    失語症の言語モダリティ間促進訓練の適応について検討するために,失語症51例を対象として, deblocking法に基づく促進パターンと失語症検査の3ヵ月後の成績の改善との関連をみた。言語モダリティ別成績,促進パターンおよび改善するモダリティに共通して,易から難に向かって (1) 言語理解, (2) 発話, (3) 書字の順序が認められた。促進はこれらの言語モダリティ間の難易度系列中の一部正答可能なモダリティに生じ,促進されるモダリティと改善するモダリティとはよく一致した。
  • 藤田 郁代
    1996 年 16 巻 3 号 p. 214-220
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    過去20年以上にわたり,失語患者の構文能力の障害に関しては,認知論的分析が進み,情報処理モデルに基づく障害の解析が行われてきた。特に,理解障害については,文の理解過程においてどのような処理単位 (統語構造の解析,意味の解読) が障害され,失語患者はどのようなルートで (助詞,語順,語の意味の各ルート) 文を理解するかという問題の解明が進んでいる。これらの研究の結果は,構文の治療計画を立てるうえでの重要な基盤になると考えられる。本論文では,最初に失語患者の構文能力障害に関するこれまでの研究を整理し,それらの知見に基づいて構文の治療計画を立てる方法を検討した。次いで, Broca 失語の失文法例に構文治療を行い,その訓練経過を分析した。本例は文の統語構造を解析することはできたが,意味を解読することが障害されていた。意味役割を文法的構成素 (主語) に関連づける過程を刺激する訓練を行うことにより,本例の文の理解,産生力は改善した。
指定発言
  • 小嶋 知幸, 加藤 正弘
    1996 年 16 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    従来の教科書とは異なる視点から考案した失語症言語治療マニュアルについて概説した。これまで本邦では失語症言語治療の論理的支柱として,アメリカで集大成された刺激法とプログラム学習法が主として紹介されてきた。それは現在でもわれわれ臨床家が治療を実践するうえでの理論的背景となっている。しかしこれらは治療における考え方の基本的枠組みを与えるものであり,個々のケースの障害構造に対応した具体的治療プランおよび治療用マテリアルまでを提供するものではない。本論文で紹介した治療マニュアルでは,治療方針の立て方から実際に治療に用いるべきマテリアルまでの「具体的」な情報を得ることができ,なおかつ利用法が簡便であることを目的とした。その特徴は,(1) 発話症状を重視する,(2) 症状観察のポイントを設定し症状を類型化する,(3) 各類型ごとの障害構造を解説し,対応する治療プランを提供する,(4) 刺激モダリティの選択を重視する,(5) パソコンを媒体として自動診断を行う,以上5点てある。
B.失語症言語治療の諸側面
  • 宇野 彰
    1996 年 16 巻 3 号 p. 227-232
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    発話促進法について,訓練効果のデータに基づいた4種類の報告を行った。 (1) 漢字を用いた訓練法と復唱的呼称訓練との比較, (2) 仮名音読,漢字音読を用いた呼称訓練と復唱的呼称訓練との比較, (3) 漢字音法力と呼称力との相互作用, (4) 伝導失語症者における復唱と仮名音読との相互作用に関する研究などである。その結果,障害の重いモダリティを訓練対象とするよりも保たれているモダリティを促進した方が有効であった。たとえば,聴覚的言語時報処理過程の障害が重篤な症例では,必ずしも聴覚的刺激が有効なのではなく,視覚的言語刺激を積極的に活用した方が効果的な場合があることを示した。また,聴覚的刺激と視覚的刺激とが同様に効果的な症例でも,自習がおこなわれやすいという点て,視覚的刺激が有用であると思われた。教材や訓練法の選択は,障害の機序によって変えるべきであり,認知神経心理学的なアプローチが重要であると考えられた。
  • 伊藤 元信
    1996 年 16 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    本稿では,まず,AOSの訓練原理について解説した。ついで,自験例を含め,詳しい訓練経過報告がなされている症例報告をとりあげ,訓練技法を紹介し,最後に,訓練効果について述べた。
  • 遠藤 邦彦
    1996 年 16 巻 3 号 p. 238-245
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
        感覚失語19例の症状を分析した結果,以下の群に分けられた。(1) 復唱障害I型 : 復唱障害を特徴とし,聴理解は障害が軽くなる。呼称障害は急速に改善。共通病変は左横側頭回から聴放線。(2) 復唱障害 II型 : 復唱障害,聴理解の障害,呼称障害が著しい。字性錯語と新造語が出現。共通病変は左上側頭回後部。(3) 意味理解障害型 : 復唱できても聴理解ができない。語性錯語と新造語が出現。共通病変は左上側頭回前部と中側頭回。(4) 混合型もしくは重症型 : 復唱障害 II型と意味理解障害型の特徴を併せ持つ。共通病変は左上側頭回と中側頭回にまたがる。(5) 不全型 : 症状が軽く復唱障害型か意味理解障害型かはっきりしない。(6) 超皮質性感覚失語 : 復唱が他の言語機能と比較してきわめて良好。反響言語が出現。
        感覚失語の言語訓練は,言語情報処理機構の損傷箇所によって異なり,(1)(2) では語音の弁別,認知,把持,(3)(6) では語義理解,(4) では語音,次に語義の認知の訓練が必要である。
  • 鈴木 勉
    1996 年 16 巻 3 号 p. 246-249
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
イブニングセミナー:失行症の見方と高次動作性検査
原著
  • 山下 主子, 山鳥 重
    1996 年 16 巻 3 号 p. 262-268
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
        右中心前・後回を中心とした梗塞病変により,交叉性失語を呈した症例の発症初期より約2年間の経過を報告した。症例は62歳の右利き男性で,軽度の左片麻痺とmutismで発症した。発症数日で麻痺は回復したが発語は不可能であった。理解は良好であり,仮名の錯書を示した。全般的な言語能力が回復した後にも構音の障害が残存し,定型的なBroca失語の病像を呈した。
        近年,持続する構音の障害を伴うBroca失語の責任病巣として, Broca領域よりもむしろ左中心前・後回の病巣が注目されている。交叉性失語には,病巣部位と言語症状の対応が左半球病変による失語症と鏡像をなすタイプと非定型的なタイプがあることが知られているが,本例は鏡像的なタイプであると考えられる。また,本例は発話不可能な時期に歌唱が可能であったことより,歌唱のメカニズムと半球優位性についても検討を加えた。
  • 今村 陽子, 植村 研一, 龍 浩志, 小島 義次
    1996 年 16 巻 3 号 p. 269-275
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    浜松方式高次脳機能スケール(以下 HHBFS と略す)を用いて,頭部外傷後の記憶と認知機能との急性期回復過程の評価を行った。対象はび漫性軸索損傷(以下 DAI)4例,び漫性脳損傷(以下 DBI)3例,脳震盪症4例である。 HHBFS は初回検査を外傷後健忘消失後7日以内に行い,その後1ヵ月後まで7~10日おき,さらにその後は約3ヵ月まで施行した。全例即時記憶は初回検査時から正常範囲であった。 DAI と DBI 群では,中間期記憶が初回検査時高度障害,2~3週後軽度障害,2~3ヵ月後ほぼ正常の経過をとった。 DBI にともなった前頭葉の小病巣は,中間期記憶が正常化しても前頭前野機能と関連する項目の障害をもたらした。頭部外傷急性期の記憶障害の回復は,外傷後健忘の消失時期には即時記憶が正常範囲の成績であり,その後に中間期記憶の回復が観察された。前頭前野機能と関連する認知障害は,大脳局所の病巣と関連が深く,記憶の回復より遅延す
  • 吉野 眞理子, 河村 満, 塩田 純一, 白野 明
    1996 年 16 巻 3 号 p. 276-283
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
    Broca野 (左下前頭回弁蓋部・三角部) を含む梗塞性病変症例7例 (全例右利き) において,MRIによる病変部位と言語症状 (発話特徴,言語機能,WAB成績) とを対比した。その結果, (1) 全例に左下前頭回弁蓋部病変が認められ,発話の長さの短縮・文形態の単純化がみられた。 (2) 左中前頭回後部に病変のある症例では,発話開始の遅れと発話量の減少が認められた。 (3) 左中心前回下部に病変のある症例では音の歪みが認められ,左中心前回下部の中で後方に病巣が及ぶと重度かつ持続した。 (4) 音素性錯語は深部白質病変または中心前回下部病変を有する症例に認められた。意味性錯語は病変部位との対応が明らかでなかった。 (5) Broca野を含む限局性病変症例は,WABで “流暢型” を示す群と“非流暢型” を示す群とに分かれた。これらの結果から,左下前頭回弁蓋部は統語論的障害と,左中前頭回後部は発話開始の遅れ・発話量の減少と,左中心前回下部は構音の障害と関連することが示唆された。
  • 松田 実, 鈴木 則夫, 生天目 英比古, 中村 和雄
    1996 年 16 巻 3 号 p. 284-291
    発行日: 1996年
    公開日: 2006/05/24
    ジャーナル フリー
        左後大脳動脈領域の脳梗塞で視覚失語を呈した症例における読みの能力を検討した。漢字,仮名ともに音読はほとんど不能であったが,漢字と絵カードとの matching が比較的良好であった。 (1) 文字の正誤判断, (2) 文字分類テストの成績は良好で,漢字,.仮名ともに文字形態記憶は保たれていた。 (3) 仮名文字列の lexical decision はまったく不能で,仮名文字列を全体として意味的処理を行う経路は障害されていると考えられた。(4) 漢字の odd word out test, (5) 漢字の分類テスト,(6) 漢字の連想テストの結果から,漢字の表す意味のカテゴリーや漢字同士の連合的および統合的関係の把握は良好であると考えられた。(7) 漢字の pointing では,選択枝が同一のカテゴリーに属する場合には成績が不良で,意味的に近縁な漢字の判別には障害があると考えられた。
        以上の結果を,純粋失読における音読と読解の解離や視覚失語の視覚性呼称障害の成立機序との関連において考察した。
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