失語症研究
Online ISSN : 1880-6716
Print ISSN : 0285-9513
ISSN-L : 0285-9513
原著
Broca野を含む限局性病変の言語症状:
MRIによる病変部位と症状との対応
吉野 眞理子河村 満塩田 純一白野 明
著者情報
キーワード: Broca野, Broca失語, MRI, 流暢性, 失文法
ジャーナル フリー

1996 年 16 巻 3 号 p. 276-283

詳細
抄録
Broca野 (左下前頭回弁蓋部・三角部) を含む梗塞性病変症例7例 (全例右利き) において,MRIによる病変部位と言語症状 (発話特徴,言語機能,WAB成績) とを対比した。その結果, (1) 全例に左下前頭回弁蓋部病変が認められ,発話の長さの短縮・文形態の単純化がみられた。 (2) 左中前頭回後部に病変のある症例では,発話開始の遅れと発話量の減少が認められた。 (3) 左中心前回下部に病変のある症例では音の歪みが認められ,左中心前回下部の中で後方に病巣が及ぶと重度かつ持続した。 (4) 音素性錯語は深部白質病変または中心前回下部病変を有する症例に認められた。意味性錯語は病変部位との対応が明らかでなかった。 (5) Broca野を含む限局性病変症例は,WABで “流暢型” を示す群と“非流暢型” を示す群とに分かれた。これらの結果から,左下前頭回弁蓋部は統語論的障害と,左中前頭回後部は発話開始の遅れ・発話量の減少と,左中心前回下部は構音の障害と関連することが示唆された。
著者関連情報
© 1996 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
前の記事 次の記事
feedback
Top