失語症研究
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原著
聴覚失認を呈した成人発症の副腎白質ジストロフィーの1例
千葉 進畑中 裕己今井 富裕松本 博之氷見 徹夫
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1996 年 16 巻 4 号 p. 302-307

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抄録
成人発症の副腎白質ジストロフィー (ALD) 症例を経験し,広範な脳白質病変に起因すると思われる聴覚失認の病態を検討した。症例は35歳の男性,右利き。視力,聴力低下で発症。意識は清明で痴呆はなかった。視力,聴力に中等度の障害があるが神経心理検査の施行は可能であった。皮膚描画試験陽性で消去現象を認めた。失語は認めなかった。音の方向性,語のアクセント,環境音認知の障害および最小弁別検査で正答率の低下があり,聴覚失認の合併が明らかになった。T2強調MR画像で両側後頭・側頭・頭頂葉の白質に広範な高信号域をみた。副腎皮質機能の低下はなかったが血漿極長鎖脂肪酸分析(sphingomyelin)で C24:0/C22:0 が高値を示し,ALDと診断した。極長鎖脂肪酸の蓄積により後頭・側頭・頭頂葉白質,皮質間連合線維が障害され,聴覚失認を含む多彩な高次脳機能障害が生じたと考えられた。
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© 1996 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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