失語症研究
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シンポジウム
記憶障害のリハビリテーション
—間違った方がおぼえやすいか? 努力した方がおぼえやすいか?—
三村 將
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1998 年 18 巻 2 号 p. 136-145

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抄録

外的補助と内的補助 (記憶方略) の使用を中心とする従来の記憶リハビリテーション (記憶リハ) の方法を述べ,健忘症患者への適応とその限界に触れた。さらに,記憶リハの新しいトップダウンな考え方,特に潜在記憶を導入する手がかり漸減法を紹介し,その問題点を通じて誤りなし学習の重要性を論じた。そのうえで,学習過程における誤りと努力という2つの要因を軸とした記憶リハの新たな理論的枠組みを考案し,誤りあり/なし,努力あり/なしの4つの学習条件でコルサコフ症候群患者に未知人物の顔-名前学習訓練を実施し,その結果を報告した。健忘症患者の記憶リハにおいては,誤りを可能な限り排除した学習過程が有効であることが示された。一方,努力は決定的な要因ではなかった。顔-名前学習は材料の特殊性や,単一の事実ではなく新しい連合の成立を要する点など,課題として困難な点もあり,今後の検討を要すると思われた。

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© 1998 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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