失語症研究
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イブニングセミナー
症例1 : 緩徐進行性統覚型視覚失認の一例
若井 正一
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1998 年 18 巻 4 号 p. 277-281

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抄録
症例は右利き男性。60歳時より相貌失認にて発症。その後,緩徐に進行する物体失認,画像失認,大脳性色盲などの視覚失認および左半側空間失認,精神性注視麻痺,視覚性注意障害などの視空間失認を呈した。図形の模写やマッチングが困難であったことより,視覚失認は統覚型であった。その一方で,末期に至るまで記銘力障害,失語症,痴呆症は顕在化しなかった。画像的には,右半球優位の大脳萎縮,血流低下,代謝低下を認めた。以上の臨床経過および画像所見から,posterior cortical atrophy の1例であると考えた。神経心理学的な注目点は以下の2点である。 (1) 統覚型視覚失認の発現に視空間失認が大きく関与していたこと。 (2) 著しい視覚失認,視空間失認の存在にもかかわらず,人や物にぶつかることなく歩行が可能であったことであった。
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© 1998 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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