失語症研究
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原著
特異的な反響言語を呈した Pick病と思われる1症例
白浜 育子浜田 博文飯干 紀代子岸本 千鶴猪鹿倉 武
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2000 年 20 巻 4 号 p. 274-279

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抄録
失語と共に特異的な反響言語を呈したPick病と思われる1例を経験した。症例は67歳右利き女性。入院時はSchneiderおよびBraunmuhlらのPick病の病期分類の第2期にあたり,約1年後に第3期へと移行し,本症例の言語症状の特徴は以下のとおりであった。 (1) 入院時は中~重度の混合型超皮質性失語を呈し,その後無言症となった。 (2) 本症例の反響言語は,減弱型,部分型,完全型反響言語がみられ,それらは「努力性反響言語 (effortful echolalia) 」 (波多野ら 1994) の範疇に入ると思われた。また語頭音を繰り返す反響言語の存在も示された。 (3) 脳血管障害における反響言語の系列変化は減弱型→完全型→部分型がみられるが,本症例においては3つの型が同時期に混在し,そして部分型の優勢な時期を経て無言症へと移行した。変性疾患において3つの型が同時に混在する場合があることが示された。
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© 2000 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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