2000 年 20 巻 4 号 p. 327-336
49歳の右利き女性。脳出血後,超皮質性運動失語を呈した。MRI にて左前頭葉内側面,前部帯状回の一部および脳梁体部の損傷が認められた。本研究の目的は speech dysfluency を分析することであった。本例の speech dysfluencyはstuttering と診断され,脳病変による neurogenic stuttering と精神的ストレスによる psychogenic stuttering の両面の特徴を有すると考えられた。本例の neurogenic stuttering の発現メカニズムについては,脳梁体部の損傷による左右大脳半球の disconnection に加え,前頭前野と前補足運動野の損傷により,基底核の神経機構が破綻した結果と考えられ,大脳皮質—基底核—視床—大脳皮質の運動系ループの関与が示唆された。