失語症研究
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原著
相貌失認患者の全体処理システムに関する研究
柴崎 光世利島 保
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2002 年 22 巻 4 号 p. 264-271

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抄録

顔の認知では,他の対象と比べて,各構成要素間の空間関係を処理し,全体的形態を把握する全体処理システムに強く依存することが知られている。本研究は,相貌失認症状を呈した脳損傷者 IMの全体処理システムを調べることにより,その障害機序を検討した。実験1では,倒立顔の認知が正立顔より障害される顔の倒立効果が IMにおいて認められるかどうかを調べた。その結果,IMの場合は倒立顔に対する認知が正立顔よりむしろ良好で,顔倒立効果とは逆の傾向が示された。実験2では,局所文字によって大域文字が構成される階層的刺激を用いた同定課題を行った。IMは健常者と対照的に部分優位な遂行を示し,大域文字より局所文字に対する反応時間が速くなった。これらの結果は,IMの全体処理システムが障害されていることを示唆しており,患者の顔認知障害にこのような視覚処理過程の不全が関与している可能性がある。

著者関連情報
© 2002 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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