抄録
前頭葉損傷患者に迷路課題を用いて,視空間的ワーキングメモリーと前頭葉の関係について検討した。さらに,前回 (宮崎ら 1999) パーキンソン病 (以下 PD) 患者に同じ迷路課題を用いて報告した結果と比較してPD患者と違いがみられるか検討した。前頭葉損傷患者 11人,健常者 9人を対象とし課題を行った結果,前頭葉損傷群は対照群よりゴールまでの施行回数が増加し,誤反応のパターンが異なっており,PD群の誤反応パターンとも違いがみられた。前頭葉は,視空間的ワーキングメモリーにおいて,変化する情報の記銘・貯蔵機能より,課題の遂行過程において変化する状況をモニターし操作を加えるといった情報の処理機能の役割が大きいと推測された。また,PD患者では前頭葉損傷者と比べると記銘・貯蔵機能が低下している点で違いがあり,PD患者の視空間性ワーキングメモリーは前頭葉との関連のみではなく異なる基盤が存在する可能性が示唆された。