抄録
失語症者の予後研究の多くは,訓練開始時と終了時における SLTA などの言語検査の成績の差が重視されてきたが,我々は,言語検査によって評価された言語能力が,必ずしも日常生活のコミュニケーション能力と一致しないと考えており,実用的コミュニケーション能力 (CADL) の必要性を感じている.そこで,失語症者の長期予後について,訓練終了時における言語能力,及びコミュニケーション能力と,社会復帰後におけるコミュニケーション能力との関係を調べた.
対象は,昭和58年から61年までの3年間に当院にて言語訓練を受けた失語症者 83 例中,CADL 検査の家族質問紙に回答のあった62例で,平均年令59.8歳,男性38例,女性24例,失語のタイプは,ブローカ失語16例,ウエルニッケ失語15例,伝導性失語3例,全失語9例,超皮質性失語1例だった.
その他重度失語症者の問題点についても,あわせて検討した.