失語症研究
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原著
左半側空間失認に交叉性失語症を合併し,リハビリ効果を認めた画家の一例
佐藤 直樹中野 清剛白野 明渡辺 象上嶋 権兵衛
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1988 年 8 巻 2 号 p. 164-169

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抄録
脳血栓発症8か月を経過した時点で重度の左半側空間失語と交叉性失語を介併した61歳の画家にリハビリを行い著明な改善をみたので報告した.
初診時神経心理学的には,線分二等分テスト,図形探索テスト,図形模写テストを行い全テストで左半側の無視が認められた.また交叉性失語がみられた.患者は右利きで家族歴にも左利きの素因はなかった.患者は病前より画家として認められていたのでクレヨン別を訓練に取り入れ,絵画活動の自立をプログラムに挙げた.訓練15か月後には再び展覧会に人選を果たした.交叉性失語の回復は,初期の重度のレベルから中等度まで改善したが,喚語困難,文法障害ともに顕著であった.半側空間失認の責任病巣に関しては,古典的な右頭頂—側頭—後頭部と考えられた.また半側空間失認のリハビリに関しては,患者の興味を引く訓練をプログラムに取り入れたことが効果的であったと考えられた.
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© 1988 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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