1989 年 9 巻 2 号 p. 127-133
失語症患者16名に対して,合成音声による言語刺激を呈示速度の条件を変えて聴取させ,その理解の難易について比較した.
その結果,刺激呈示速度の遅い方 (毎秒2.4音節) が速い方 (毎秒4.6音節) よりも聴取成績は良好となリ,従来の研究により得られている結果や,臨床的に観察される事実と一致する知見が得られた.また,刺激呈示時間を変化させる方法として,刺激音の間に無音時間を挿入する方法と,刺激音の母音を延長する方法を用いたが,両条件のうち後者の方が前者よりも失語症患者の聴覚的理解に良い影響を及ぼすということがわかった.失語症患者の聴覚的理解を支える時間要因の中で,語音の母音継続時間や無音時間の挿入といった要因もまた,何等かの意味ある役割を但っているのではないかということが結果から考えられる.