APU言語研究論叢
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日本語の接触場面会話における長いターンの維持
―― 使用される手続きの位置と表現 ――
花村 博司
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 7 巻 p. 75-

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抄録
日本語の接触場面会話において、話し手が長いターンを維持する際に利用する手続きは、母語話者と非母語話者とで異なる傾向がある。母語話者は、発話の冒頭付近で談話標識を用いて、そのターンが長くなることを聞き手に知らせる方法や、発話の終了可能な箇所で言いさしたり、発話文を倒置したりする方法をとっている。一方、非母語話者は、言いまちがいや言いなおしによってターンが長くなっている。また、母語話者も非母語話者も発話途中で言いよどみ表現を用いるが、非母語話者が同じ表現をくり返すのに対し、母語話者の表現は多様である。さらに、母語話者も非母語話者も、長い発話の前に内容を予告する手続きを用いるが、談話構成の方法に差異があり、非母語話者の長い発話の内容は聞き手である母語話者にうまく伝わらないことがある。母語話者は多様な手続きを会話スキルとして利用し、ターンが長くなることを聞き手に早めに知らせているといえる。
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© 2022 立命館アジア太平洋研究センター
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