2011 年 59 巻 2 号 p. 299-306
琵琶湖において2月から7月に小型定置網で漁獲されたアユの体長の経月変化と,湖水温,プランクトン量,アユの生息密度および河川への遡上尾数との関係を調べた。漁獲体長の変動傾向は5月までと6月以降では異なり,6月以降の変動には大型個体が河川遡上した影響が現れている可能性があった。2月の漁獲体長は前年秋のアユ仔魚密度と負の相関が認められた。3月以降の漁獲体長または漁獲体長増加率はプランクトン量と正の相関があった。6月と7月の漁獲体長は4~6月の小型定置網による本種の CPUE と負の相関があった。これらの結果から,琵琶湖産アユの漁獲サイズの年変動には,本種の生息密度が減少要因として,餌となるプランクトン量が増加要因として,それぞれ成長を介して関わっていることが明らかとなった。また,2月のアユの漁獲体長と CPUE およびプランクトン量から5月の漁獲体長の予測式を導くことができた。