2013 年 61 巻 2 号 p. 153-162
ビン式孵化器を用いたワカサギ卵の集約的管理では,収容前に卵の粘性除去処理が必要である。本研究では,安全性の観点から食品として認可されている緑茶抽出物(茶)に注目し,卵の粘性除去,孵化および孵化仔魚の健苗性に与える茶溶液への卵の浸漬処理の効果を調べた。卵粘性除去について検討した結果,濃度1.0%以上の茶溶液で処理を行うと,95%以上の卵粘性除去効果が得られ,ホタテ貝殻粉末やタンニン酸溶液など従来の処理方法と同等の効果をもつことがわかった。また,実証試験の結果から,1.0%の茶溶液で卵を処理すれば,従来の方法と同等ないしそれ以上の生残率,孵化率,孵化仔魚の10‰汽水耐性および絶食耐性を得られることが明らかになった。茶は高価なため,種苗生産コストを考慮すると,その使用を必要最低濃度の1.0%に止めることが重要である。以上の結果から,1.0%の茶溶液処理が,ワカサギ卵の粘性除去に有効な手段であることが示された。