水産増殖
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61 巻, 2 号
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原著論文
  • 築山 陽介, 征矢野 清
    2013 年 61 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    ホシガレイの仔稚魚を用いて,メチルテストステロン(MT)の雄化誘導に及ぼす影響を調べた。40日齢から MT を0.001,0.01,0.1,1,10μg/g・diet の濃度で経口投与した結果,0.1および 1μg/g・diet では雄への性比の偏りが認められた。また,10μg/g・diet では性比に偏りはみられず,GSI が減少していることから,過剰投与であると考えられた。46~110,130,170および300日齢の期間に MT を0.5μg/g・diet 投与した結果,130日齢以降の投与区において雄への偏りが認められ,160日齢までの投与で雌が出現しなくなった。これらのことから,本種の遺伝的雌を雄化するには,MT を0.5~1μg/g・diet の濃度で少なくとも130日齢を超えて投与する必要があると考えられた。
  • 岩谷 厚志, 金子 誠, 秋山 信彦
    2013 年 61 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    本研究では,クロウミウマ稚魚期の生活様式の変化を,骨格形成と走光性の変化から考察した。稚魚は,水平方向から光を照射した場合では産出直後から24日齢まで正の走光性を示したが,上方から光を照射した場合では 16日齢前後から正の走地性が強まり,容器の底面に分布した。また,自然光条件下では,1 日齢と11日齢では表層から中層を浮遊し,16,24日齢では底層に多くの個体が分布した。16日齢以降では夜間にネットに巻きつく個体が多くみられた。さらに,ネットに巻き付いた個体は,ほぼ全ての個体で尾部末端までの化骨が認められた。
    以上の緒結果から,クロウミウマ稚魚は,16日齢前後まで浮遊した後に走地性が強くなり底生生活に移行する。同時に尾部末端まで化骨し,水底の基質に巻き付くことが可能となる。また,昼間は底層で遊泳し,夜間は基質に巻き付くことが明らかとなった。
  • 水野 伸也, 畑山 誠, 寺西 哲夫, 小出 展久
    2013 年 61 巻 2 号 p. 153-162
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    ビン式孵化器を用いたワカサギ卵の集約的管理では,収容前に卵の粘性除去処理が必要である。本研究では,安全性の観点から食品として認可されている緑茶抽出物(茶)に注目し,卵の粘性除去,孵化および孵化仔魚の健苗性に与える茶溶液への卵の浸漬処理の効果を調べた。卵粘性除去について検討した結果,濃度1.0%以上の茶溶液で処理を行うと,95%以上の卵粘性除去効果が得られ,ホタテ貝殻粉末やタンニン酸溶液など従来の処理方法と同等の効果をもつことがわかった。また,実証試験の結果から,1.0%の茶溶液で卵を処理すれば,従来の方法と同等ないしそれ以上の生残率,孵化率,孵化仔魚の10‰汽水耐性および絶食耐性を得られることが明らかになった。茶は高価なため,種苗生産コストを考慮すると,その使用を必要最低濃度の1.0%に止めることが重要である。以上の結果から,1.0%の茶溶液処理が,ワカサギ卵の粘性除去に有効な手段であることが示された。
  • 古下 学, 福田 翼, 福田 穣, 山下 亜純, 柳 宗悦, 前野 幸二, 田中 真二, 杉原 志貴, 安部 昌明, 長野 泰三, 芝 恒男
    2013 年 61 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    2003~2009年に日本の養殖ブリ類から分離された類結節症原因菌 Photobacterium damselae subsp. piscicida 247株について薬剤感受性調査を行った。その結果,全ての株が少なくとも1剤以上に耐性を示し,2峰性により耐性が確認された薬剤は10薬剤(アンピシリン(ABPC),オキシテトラサイクリン(OTC),クロラムフェニコール(CP), カナマイシン(KM), ジヒドロストレプトマシシン(DSM),フルメキン(FMQ),オキソリン酸(OA),スルファモノメトキシン(SMMX),トリメトプリム(TMP),ホスホマイシン(FOM))であった。また,55.5%の株が6剤耐性パターン(OTC・CP・KM・FMQ・OA・SMMX)を示した。RAPD(Random amplified polymorphic DNA)解析により,分離株は,5つのRAPD パターン(P2~P6)に分類された。7剤以上の多剤耐性が2007年以降増加し,同時期に優占な RAPD パターンが P2 から P4 に変化した。
  • 南 洋一, 玉城 信
    2013 年 61 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    イシナマコとハネジナマコの人工種苗に人工飼料を給餌して陸上飼育試験を行った。両種ともに浮体カゴを用いて上部から海水を注水して飼育した。その結果,海砂を敷いて付着珪藻を追加給餌した試験区の成長が速かった。最大の日間増重量はイシナマコが27.2 mg/day,ハネジナマコが291.5 mg/day であった。この時ハネジナマコの日間増重量はイシナマコの約10倍大きかった。ハネジナマコの平均体重は322日間で3.8±2.3 g から64.1±24.1 g と増え,飼育密度は約6,937 g/m2となったが成長は止まらなかった。しかしながら,商品サイズである500 g には達しなかった。
  • 崎山 一孝
    2013 年 61 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    クルマエビの産卵を同調させるために,親エビを低水温で飼育すること(低水温処理)で産卵を抑制し,その後昇温することで産卵するかどうかを検討した。まず,産卵誘発のために片側眼柄を結紮(眼柄処理)した親エビを,水温10°Cと15°Cで最長10日間飼育した後,水温25°Cの水槽で産卵させた。その結果,低水温処理期間に産卵は起こらず,昇温後平均 5 日目に産卵が確認された。次に,眼柄処理のタイミングが産卵成績に与える影響を調べるために,低水温処理(15°C)の前後にそれぞれ眼柄処理を行い,異なる期間の低温処理(0; 対照-10日)した後,20°Cに昇温したところ,産卵成績に実験区間の有意差は検出されなかった。これらの結果をもとに,予め眼柄処理を施した親エビを15°Cで 0 ~14日間の異なる低水温処理したクルマエビ52個体を同時に20°Cに昇温したところ,昇温3~5日目に40個体(産卵個体率78%)が産卵し,計914万粒(22.8万粒/尾)の卵を得ることができた。
  • 内村 祐之, 倉本 誠
    2013 年 61 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    健常貝,病貝をエタノール中でミキサーを使い磨粉し冷暗所に 1ヶ月放置して,天然生理活性物質の分離法で濾液の生理活性物質の探索を行った。それぞれの分画をアコヤガイ初代培養血球に加え,細胞毒性を指標に細胞毒を精製した。その結果,病貝には細胞毒成分が多く含まれ,酸化された脂質あるいは糖の含有量が多いことがわかった。また,分画の過程で病貝から多く回収された白色結晶は2種類の植物ステロール,Cholesterol およびその代謝中間体であった。病貝で Cholesterol 前駆体の蓄積が顕著であったことから,細胞毒の悪影響で Cholesterol が代謝されず,性ホルモンが生成されなかったと推察された。
  • 金子 誠, 下川 原誠, 西村 弥亜, 齋藤 寛, 岡田 喜裕, 秋山 信彦
    2013 年 61 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    クロウミウマ稚魚の生残率を向上させる目的で,ワムシへの栄養強化および飼育水への栄養強化用クロレラの添加効果を検証した。栄養強化したワムシと,最大60時間ワムシ餌を与えず未強化としたワムシを稚魚に与え,生残を比較した。飼育水に栄養強化したワムシと強化に用いたクロレラを入れた場合では23.3~88.3%が生存した。一方,未強化ワムシを与えると0~10%の低い生残率であった。栄養強化したワムシを稚魚に与え,108時間飼育したときの稚魚の生体内の脂肪酸では LA が3.49~6.42 mg/g と,未強化ワムシを与えた場合より2.50~5.43 mg/g 多かった。また,n-3HUFA についても0.55~5.45 mg/g 多かった。これらから,ワムシの脂肪酸含有量を補填するためにクロレラを飼育水中にも添加することがクロウミウマ稚魚の初期減耗を低減することにつながると考えられた。
  • 肖 寧, 榊原 卓哉, 梁 佳, 濱田 友貴, 村田 昌一, 谷山 茂人, 八木 基明, 橘 勝康
    2013 年 61 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    養殖トラフグの肉質に及ぼす希釈海水飼育の影響を検討するために,養殖トラフグ 1 歳 8ヶ月魚を通常海水と希釈海水(塩分約1.1%)で 4 週間飼育し,即殺後,両区の血液値を測定するとともに氷蔵 1 日目の肉質の違いを普通筋の感覚色度,破断強度,圧出水分量および官能検査値の点から検討した。また,皮膚に寄生する 2 種の寄生虫の寄生程度についても計測を行った。両区間の血液値は試験期間中を通じて顕著な違いを認めなかった。寄生虫の変化では,対照区は付着寄生虫総数に大きな変化は認められなかったが,試験区で飼育期間の延長に伴う寄生虫数の減少が認められた。普通筋の肉質において感覚色度 L値と a値は有意な差を認めなかったが,b値は飼育 4 週目で試験区が有意に高かった。破断加重は試験区が飼育期間を通じて高い傾向を呈し,圧出水分量は,3 週目以降で試験区が低い値を呈した。官能検査における硬さおよび総合評価では,試験区の評価が高かった。
短報
資料
  • 毛利 紀恵, 上村 泰洋, 水野 健一郎, 木下 光, 年藤 俊一, 小路 淳
    2013 年 61 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2015/04/02
    ジャーナル フリー
    瀬戸内海中央部のアマモ場において2008年8月から2009年7月に月1回の魚類採集を実施した。各月に巻き網を用いて10 m 四方のエリア4箇所で採集した結果,53種5,885個体の魚類を得た。個体数ではアミメハギ(21.5%),シロメバル(16.9%),ヒメハゼ(12.3%),重量ではシロメバル(15.8%),ヒガンフグ(6.8%),マタナゴ(10.1%)の順に多かった。出現魚類の100 m2あたり種数,個体密度,湿重量の最大値はそれぞれ9月(16.5種),10月(365.8個体),6月(672.6 g)に,最小値はすべて2月(7.5種,25.0個体,115.5 g)に観測された。ヨウジウオ,マタナゴ,ヒメハゼ,スジハゼ,アミメハギは全ての月に採集され,シロメバル,ハオコゼ,ニクハゼ,ヒガンフグは11ヶ月間,アサヒアナハゼ,アカオビシマハゼは10ヶ月間採集された。
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