水産増殖
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原著論文
微小動物プランクトンに対するウナギ仔魚の初期摂餌
Stenly Wullur吉松 隆夫田中 秀樹大谷 諒敬阪倉 良孝金 禧珍萩原 篤志
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2013 年 61 巻 4 号 p. 341-347

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抄録

ウナギ Anguilla japonica の仔魚飼育にはアブラツノザメ Squalus acanthias の卵を原料とする懸濁態飼料が用いられている。しかし,これをウナギ種苗を量産するために十分量確保できる見込みはなく,大量に確保可能な代替飼料を探す必要がある。本研究では微小動物プランクトン(Proales similisSynchaeta sp.,Keratella sp.,Brachionus rotundiformisB. angularis)とカイアシ類(Paracyclopina nana)のノープリウス幼生,懸濁態飼料(対照区)を用い,ウナギ仔魚の摂餌行動観察を通じて餌料としての可能性を検討した。孵化後6,7,8日目の仔魚の摂餌率はサメ卵ベースの飼料で26.7-100%,Proales similis で20-46.7%,Synchaeta sp. で 0-6.7%となった。孵化後14日目の仔魚ではサメ卵飼料とProales similis で100%と増加し,B. rotundiformis では53.3%, Synchaeta sp.で20%,Keratella sp.で13.3%, B. angularis で6.7%となった。このとき, 68.9%のサメ卵飼料,37.2%の Proales similis,1.0%の Synchaeta sp. が中後腸に達していたが,他のワムシ類は前腸部のみにみたれた。以上の結果から,今回用いた微小動物プランクトンの中では Proales similis が,ウナギ仔魚飼育の餌料生物として最も有望であることが示された。

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© 2013 日本水産増殖学会
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