2014 年 62 巻 1 号 p. 65-73
ケガニの種苗生産において,幼生が沈降した後に大量死することが問題になっている。幼生の沈降を回避する飼育技術を開発する基礎として,水槽内の光環境が幼生の沈降と発育に及ぼす影響を透明ポリカーボネート製と黒色ポリエチレン製の水槽を用いて調べた。また,攪拌機による飼育水の攪拌効果も予備的に検討した。昼間の光環境は水槽種類で大きく異なり,光量子束密度は黒色水槽では水深に比例して減少したが,透明水槽では中層と下層で大きい値を示した。水槽内の下層に分布したケガニ幼生の割合(沈降率)は日齢とともに大きくなった。昼間の水槽内分布は飼育水の機械的攪拌から影響を受けなかったが,沈降率は透明水槽を使用した場合に高かった。また,幼生の発育は透明水槽で遅延した。さらには,沈降率は昼間より夜間の値が低く,水槽間の差が縮小した。以上のように,水槽内の光環境が幼生の水槽内分布と発育に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。