2014 年 62 巻 4 号 p. 433-440
半屋外の大型水槽(100 kl)を用いてイワガキの付着期幼生の生産を試みた。飼育期間中は作業の簡素化を目的に日常的な底掃除,換水作業を行わなかった。幼生の生産試験は2回行い,餌料には2,3種類の異なる微細藻類餌料を用いた。1回目の生産試験では,C. calcitrans(市販品),Isochrysis sp.(T.ISO),C. gracilis の順に給餌を行い,付着期幼生を3,500万個体生産した。2回目の生産試験では,Isochrysis sp.(T.ISO),C. gracilis の順に給餌を行い,付着期幼生を1億2,200万個体生産した。D 型幼生から付着期幼生までの生残率は前者が63.1%,後者が79.5%と推定され,いずれも従来の小型水槽(1 kl)を用いた生産方法における値を上回った。本生産方法は日常の幼生管理に必要な時間は僅かであり,用いる餌料も屋外培養により比較的容易に生産できることから,6~7月のイワガキ種苗生産初期における付着期幼生の大量生産方法として適していると考えられた。