2015 年 63 巻 1 号 p. 39-47
種子島周辺のアオリイカ類の資源組成と産卵水深を明らかにするため,シロイカで開発したマイクロサテライト10座と mtDNA の COI 前半部塩基配列を DNA マーカーとした種判別方法を検討した。その結果,シロイカおよびアカイカにはマイクロサテライトマーカーのアリル型や COI 前半の塩基配列に差異が認められ,種判別に有効であることがわかった。種子島沖に設置された人工産卵礁(水深20 m,40 m,50 m)より得られた卵の種判別を COI 前半の塩基配列に基づいて行ったところ,水深20 m を除いて,全てアカイカに由来すると判定された。以上の結果から,アカイカの産卵水深はシロイカより深く,水深40~50 m と考えられた。また,本研究で用いた COI 領域の部分配列を用いて,インド太平洋海域におけるアオリイカ類の系統関係の推定が可能で,ベトナムとインドネシアにおいてもアカイカとシロイカの混在が示唆された。