水産増殖
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原著論文
温帯から熱帯におけるハナビラダカラ Monetaria annulus の個体群特性
Shiela Villamor山本 智子
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2015 年 63 巻 3 号 p. 273-282

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抄録

熱帯から温帯まで幅広く分布し,主に熱帯域で重要な資源となっているハナビラダカラについて,資源管理上重要な個体群の特性を調査した。調査は,熱帯に位置するフィリピン各地,亜熱帯の奄美群島及び温帯に属する種子島や薩摩半島の潮間帯で行った。多くの海岸では成熟した個体に比べて未成熟個体が極めて少なく,資源維持の観点から未成熟個体の生息環境を明らかにする必要性が示唆された。雌雄比はいずれの個体群でもどちらかに有意に片寄ることはなく,いくつかの個体群では,雌の殻長の方が有意に大きかった。工芸品として利用するため大型個体を選択的に採集する行動は雌への漁獲圧を高める可能性があり,長期的な資源管理において好ましくない結果をもたらす可能性がある。以上の結果から,本種の繁殖に関する既存の研究も参考にして,資源の持続的利用のための漁業管理の方向性を提案した。

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© 2015 日本水産増殖学会
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