水産増殖
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原著論文
マハゼ雌の生殖腺発達に伴う血中ビテロジェニンおよびエストラジオール17βの変化
宋 婧長江 真樹征矢野 清
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2017 年 65 巻 4 号 p. 303-310

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抄録

マハゼは漁業資源および遊漁の対象として重要な魚種であり,日本では馴染みの深い魚種であるが,その生殖に関する生理学的情報は極めて少ない。そこで,長崎市多以良川河口において7月より2月にかけて採集したマハゼ雌の生殖腺発達を観察するとともに,それに伴う血中ビテロジェニン(VTG)と雌性ホルモン(エストラジオール17β,E2)の変化を調べた。本種の卵黄蓄積は,水温の低下と日長の短日化が進行する11月より始まった。12月に入ると最終成熟期の卵母細胞を持つ個体が出現し,それは2月まで確認された。血中VTGおよびE2濃度は,11月から12月にかけて上昇し,それ以降高値を維持した。この変化は,生殖腺の発達とよく一致した。このことから,本種の卵巣発達はE2によって誘導されるVTGの蓄積によって進行し,低水温期の1月以降に産卵期を迎えることがわかった。

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© 2017 日本水産増殖学会
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