2019 年 67 巻 3 号 p. 225-232
アオリイカ用の初期飼料を開発するために,飼料に塩分が浸透した場合の摂餌行動を調べた。生鮮シラスと人工飼料を海水と蒸留水に浸漬し,シラスについては海水の主要塩類にも浸漬させ7 日齢以降の個体に給餌した。これらの餌に対する忌避率は NaCl,海水,MgCl2,KCl,CaCl2 の順で高かった。忌避されたシラスを蒸留水で洗浄した場合には忌避率が低下した。また,人工飼料でも同様に海水に浸漬した場合では忌避されたが,蒸留水の場合では忌避されなかった。これら忌避率の高いシラス及び人工飼料を蒸留水とともにホモジナイズした上澄み液の塩分は,忌避されなかったものよりも高かったことからそれぞれの成分が餌表面に浸透したと考えられる。また,7 ~28日齢の個体の吸盤基底部には他の頭足類で明らかにされている化学物質受容細胞と同様の形態をしている細胞が存在した。以上のことから捕捉時に飼料中の塩分を化学物質受容細胞で感知することで忌避したと考えられる。