水産増殖
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原著論文
ブリの病原細菌の感染性に及ぼす腹腔内注射の影響
橋口 健太郎稲見 佑子大嶋 俊一郎
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2019 年 67 巻 4 号 p. 303-312

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抄録

養殖現場では感染症予防のために腹腔内へのワクチン投与が行われるが,この行為は生体にとってストレスとなり,生体防御能や感染症の感受性に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では,ワクチン投与を想定し生理食塩水を腹腔内に注射した後のブリのストレス応答および生体防御能の変化を調べ,実験感染を行った。ストレス指標である血中コルチゾール濃度は腹腔内注射後に上昇し,白血球の貪食活性が低下するなど一部の生体防御能にも影響が認められた。さらに,腹腔内注射1時間後にそれぞれ3種類の病原菌を用いて実験感染を行ったところ,類結節症原因菌およびβ溶血性レンサ球菌症原因菌を感染させた腹腔内注射区の累積死亡率は対照区よりも有意に高い値となり,類結節症原因菌の鰓の付着菌数も,腹腔内注射区で対照区よりも多くなった。以上のことから,腹腔内注射はブリに対してストレスとなり,感染症による死亡率を高めることが明らかとなった。

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© 2019 日本水産増殖学会
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