2021 年 69 巻 1 号 p. 13-20
2019年夏季に三重県の真珠養殖漁場において,外套膜萎縮を呈するアコヤガイが多数確認された。症状と外套膜の遺伝子発現の関連を明らかにするため,健常貝と発症貝の外套膜中心,縁膜,膜縁における貝殻基質タンパク遺伝子(msi31,msi60),チロシナーゼ遺伝子(OT47,pfty1)およびレクチン遺伝子(PoGal)の発現量を定量 PCR で測定,比較した。その結果,発症貝は健常貝と異なる遺伝子発現パターンを示し,特に膜縁での OT47 の発現量の減少や,縁膜での msi31 の増加が認められ,外套膜膜縁の貝殻からの剥離,貝殻内面の褐色の色素沈着,真珠層の異常等の症状との関連が推察された。また,外套膜膜縁に付着している細菌叢の 16S rRNA のメタゲノム解析を行った結果,Tenacibaculum 属の占有率が健常貝より発症後5週間以上の貝で高く,膜縁表面の細菌叢が発症により変化していることが明らかになった。