2021 年 69 巻 1 号 p. 93-100
本研究の目的は長期間,硝化作用を有する熟成状態のろ材を保存するための安定状態を評価することである。密封して保湿状態にしたろ材のアンモニア酸化活性に及ぼす保存温度の影響を調査した。ろ材のアンモニア酸化活性を25℃で測定した後,これらを海水から取り出してジッパー付き袋に入れて,1~35℃の8段階の温度で180日間管理した。1℃で保存したろ材のアンモニア酸化活性は最初と同様であった。加えて,アンモニア酸化古細菌とアンモニア酸化細菌の現存量は,それぞれ14%と10%でわずかな減少であった。5~20℃で保存したろ材の活性は約50%まで減少した。活性のさらなる減少は25℃以上で保存したろ材で認められた。また,1℃で約3年間保存した場合でも,ろ材の活性が33%残っていることが示された。ゆえに,硝化作用を有する熟成ろ材の長期間保存のためのアンモニア酸化微生物の保持は,設定温度温度内では1℃で最も高かった。