水産増殖
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原著論文
島根半島におけるワカメ養殖の交雑育種による高水温耐性株を用いた早期出荷による生産性向上への試み
金元 保之清川 智之佐々木 正
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2023 年 71 巻 1 号 p. 9-22

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抄録

本研究では室内実験において交雑育種により選出したワカメの高水温耐性株とその対照株を高水温期(2021年9月29日;水温25.4℃),中水温期(2021年10月15日;水温24.4℃)および従来の沖出し時期に当たる低水温期(2021年10月31日;水温22.2℃)に沖出しすることで,高水温耐性株の有効性について検証した。まず,高水温期に沖出しした対照株は激しく芽落ちした一方,高水温耐性株は順調に生育したことから早期出荷の可能性が示唆された。また,高水温耐性株による養殖試験では,生鮮ワカメの取引価格が高い1月上旬に,1個体当たりの平均重量が100 g を超える出荷サイズの藻体が得られた。さらに,1-3月に高・中水温期に沖出しした高水温耐性株を収穫することで,従来の沖出し時期・株(低水温期に沖出しした対照株)と比較し,1.8-3.3倍の水揚げ額が見込めることから,高水温耐性株の現場導入により,安定生産・生産性向上およびそれに起因する収益の増加が期待された。

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© 日本水産増殖学会
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