多毛類Perinereis aibuhitensisは,国内では釣り餌として大きな需要がある。しかし,P. aibuhitensisは全て輸入品で,資源枯渇など来る輸入規制に備え,P. aibuhitensisの国内養殖が不可欠である。P. aibuhitensisの国内養殖を行うためには,その生活史を理解することが必要である。そこでP. aibuhitensisの日内リズム,特にそれを調整するとされるセロトニン,キヌレニンそしてインドール-3-酢酸に着目し,P. aibuhitensis頭部におけるそれらの日内リズムを調べた。セロトニンとキヌレニンは,インドール-3-酢酸より多く合成されていたが,有意な日内変動がなかった。一方,セロトニンとキヌレニンに比べ合成量は少なかったが,インドール-3-酢酸合成には日内リズムがあった。これらのことは,高密度養殖においてもインドール-3-酢酸の日内リズムを維持できる最適な生活環境を人工的に維持できれば,P. aibuhitensisを日本国内で効率的に飼育・生産できる可能性を示している。
本研究では室内実験において交雑育種により選出したワカメの高水温耐性株とその対照株を高水温期(2021年9月29日;水温25.4℃),中水温期(2021年10月15日;水温24.4℃)および従来の沖出し時期に当たる低水温期(2021年10月31日;水温22.2℃)に沖出しすることで,高水温耐性株の有効性について検証した。まず,高水温期に沖出しした対照株は激しく芽落ちした一方,高水温耐性株は順調に生育したことから早期出荷の可能性が示唆された。また,高水温耐性株による養殖試験では,生鮮ワカメの取引価格が高い1月上旬に,1個体当たりの平均重量が100 g を超える出荷サイズの藻体が得られた。さらに,1-3月に高・中水温期に沖出しした高水温耐性株を収穫することで,従来の沖出し時期・株(低水温期に沖出しした対照株)と比較し,1.8-3.3倍の水揚げ額が見込めることから,高水温耐性株の現場導入により,安定生産・生産性向上およびそれに起因する収益の増加が期待された。
アゲマキは,1980年代まで有明海湾奥部の泥干潟で重要な水産資源であったが,1990年代に激減した。佐賀県では1997年から放流によって母貝を増やし,再生産サイクルの復活による資源回復に取り組んでいる。放流した稚貝は,順調に成長することから,高い生物生産力があると推定された。そこで,本研究では,有明海湾奥部の4つの地先で放流後の生残と成長を調査した。また,この結果から二次生産量を推定し,潮高(地盤高)との関係を考察した。 調査の結果,生物量は最大で4,968 gWW/m2 に達した。二次生産量を推定したところ,1,456~4,127 gWW/m2/yr と高く,同じ有明海内のアサリより多い値であった。また,二次生産量は地盤高が低いほど多くなる負の相関関係がみられた。資源の回復,漁獲の再開のためには,本調査で得られた地先の地盤高別二次生産量を考慮し,生物生産力を最大限発揮できるような取組を進める必要がある。
半円真珠の効率生産を目指して環境水中の懸濁物(TSS)濃度がインドネシア Java 島の淡水域に生息する二枚貝 Sinanodonta woodiana の真珠層色と真珠層の異常分泌に及ぼす影響を調査した。TSS 濃度が10 mg 以上含まれる水域で採取された貝では,真珠層に0.5 mm 程度の着色を伴う円形の突起が高頻度で形成されていた。この突起の頻度は TSS 濃度と正の相関が見られた。TSS 濃度が高い水域(10 mg)で採取された貝では,真珠層が薄く,しかも,真珠結晶一層の幅が TSS 濃度の低い水域(10 mg 以下)の貝に比べて狭かった。前者の貝では真珠層の黄色度や輝度も低い値を示した。これらの結果から,TSS 濃度の高い水域は,本種による高品質半円真珠の生産には適さないと考えられる。
The Japanese eel (Anguilla japonica), is listed as “Endangered” by the IUCN. Understanding eel riverine habitat is useful in considering conservation strategies. This study sought to determine the relationship between environmental DNA (eDNA) concentrations derived from Japanese eels, water quality, and river structure in three small rivers in Nagasaki, Japan. eDNA was detected at 14 of 15 sites (93%). The concentration of eDNA in brackish water was significantly higher than that in freshwater and was correlated with water depth. Eel occurrence throughout the river suggests that Japanese eels are adapted to diverse riverine environments.
飼育下においてインド産広塩性フグ Dichotomyctere fluviatilis にヒト絨毛性性腺刺激ホルモンを投与し,産卵行動,仔稚魚の形態発育および成長を観察した。産卵形態はばらまき型で親魚による卵保護はなく,雌一尾あたり,70,000以上の沈性粘着卵(直径0.73 ± 0.05 mm)を産卵した。卵は産卵後4-5日で孵化した。初期の仔魚(孵化仔魚脊索長1.87 ± 0.19 mm)はシオミズツボワムシで比較的簡易に飼育でき,360日齢で88.75 mm SL に至った。これらの知見は飼育下における広塩性フグ類の繁殖技術向上に貢献するものと考えられるが,成魚繁殖および仔稚魚生育の適正な塩分条件の解明は Dochotomyctere 属の増殖技術向上に必要不可欠であろう。