1963 年 11 巻 1 号 p. 43-51
沿岸の養魚池や諸水面を利用してのニジマスの養殖 (冬期) の可否について検討するため, ニジマスの塩分に対する適応性についてみると共に, それにもとづいて鹹水中での飼育を試みた。
1) 淡水で飼育されたニジマスを直接鹹水に移した場合, c114‰程度まではそのための斃死はみられない。
2) cl7.5‰に4日間慣らしたものでは, cl15.3‰の鹹水中でも斃死はなく, cl9.5‰に4~6日間慣らしてcl17.5‰の鹹水に移した場合, 当才魚ではなお斃死が多いが2才魚では斃死がみられなかった。
3) cl14‰前後の沿岸水により, 3カ月間の水槽飼育を行なったが, 歩留りも良好 (93%) で, 摂餌や成長なども淡水の場合と変らない結果が得られた。
4) 鹹水用水路 (cl13.7~16.5‰) に設置した網生簀による長期間の飼育においても, 斃死はほとんどなく順調な飼育結果が得られた。
5) 鹹水養魚池や養鰻池 (cl12~16‰) における飼育では, 魚はいずれも出荷できる大きさに十分成長したが, 鳥害その他もあって歩留りの点では1例を除いては不良な結果に終った。しかしこれらの池のように換水量が少なく植物プランクトンの濁りがあるような環境においてもその養殖は十分行なえることが認められた。