水産増殖
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魚巣がウナギの飼育成績に与える影響
三好 勝
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1976 年 23 巻 4 号 p. 168-172

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抄録

1. 固型体が魚に与える生理生態的な影響を調べたものは少ない。ここではウナギの養中を用いて生簀のなかへ, 筒を入れないもの, 入れたもの, 筒を入れて周りに暗幕をしたものの3種類について, 減耗率, 増重倍率, 餌料効率等について養魚成績を比較した。
2. 実験材料のウナギはシラスを1ヵ年淡水養殖した平均体重11-14gのものである。
3. 期間は昭和41年6月16日から1ヵ年間とした。
4. 筒入れ区は3区のなかで斃死率 (6%) も消息不明率 (33%) ももっとも低い。また増重倍率 (1.9) はもっともよい。ウナギは夜行性であるが昼間は筒のなかへ魚体を入れ頭部を両端から少し出して穴居静止している。このような生活様式をさせることが共食いの防止に役立ち, ストレスによる斃死を減少させたものと思われる。これとは対照的に筒なし区は昼間も不必要な遊泳をしいられ, 斃死率 (25%) と共食い率 (消息不明率51%) の増大を招き, 増重倍率 (0.55) が低い結果となったものと思われる。筒入れ暗幕区は減耗率 (43%) が筒入れ区よりはわずかに高いが増重倍率 (1.49) は筒入れ区についで良い結果となっている。これは底面から光が入るため, 筒入れ区とほぼ同様な傾向を示したものと思われる。
5. ウナギ養成の場合, 体長の2倍位の長さで10数尾が入れる程度の太さをもった管を, 全飼育魚がはいれるよう十分沈設することが養魚成績を向上させるうえで重要であると思われる。
6. ウナギの入巣行動は, 内面が粗面であることは必要条件とは思われない。昼間, ウナギは休息と安住性が得られるために入巣行動をとるものと思われる。なお入管に際してはなわばり的優占も集中もみられずほぼ均等に入っている。

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