水産増殖
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水質環境と魚類の成長―VI
温室加温養鰻池の酸素及びアンモニア態窒素の収支について
千葉 健治
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1980 年 28 巻 1 号 p. 46-55

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抄録

1.温室加温養鰻池で溶存酸素の増加に関する要因として, (1) 水車を含め空中からの溶入, (2) 池水中の植物プランクトンの光合成, (3) 注水による搬入, また減少にかかわる要因として, (1) ウナギの呼吸による消費, (2) 池水中の細菌・動植物プランクトンによる消費, (3) 底泥による消費, (4) 排水による搬出を考え, それぞれの要因による供給, 消費の大きさを測定し, 一部については推定し, 池中での酸素収支の解明を試みた。
2.同様にNH4-Nの増加に関する要因として, (1) ウナギの分泌排泄, (2) 底泥よりの溶出, また減少に関連する要因として, (1) 池水中の細菌・植物プランクトン等の異化同化, (2) 換水による搬出を考え, それぞれの要因による供給, 除去の大きさを測定又は推定し, 池中でのNH4-N収支の解明を試みた。
3.酸素消費に関しては, 収容密度が高いためウナギによる酸素消費の割合が最大で, 密度によって変動するが76.08~86.41%と推定され, 池水, 底泥による消費の割合はそれぞれ7.55~13.29%, 3.21~5.66%と小さかった。また光合成, 注水による搬入もその供給割合は著しく小さくそれぞれ7.17~12.62%, 1.34~2.36%で, ほとんどが水車匠よる溶入と考えられ, 水車1HP当たり大略2.07~3.93m3/dayの溶入があるものと推定された。
4.池水中へのNH4-Hの供給割合は, ウナギの収容密度の高いことにより, その分泌排泄によるものがほとんどで全体の94.18~97.01%を占め, 底泥からの溶出は僅かであった。また細菌・植物プランクトンによる異化・同化量は小さく, 大部分が換水により除去されることになる。しかし収支の平衡が保たれるとして推定した池水のNH4-N濃度と養魚池での観測値とが一致せず, 他の形でのN除去もありうると考えられた。

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