水産増殖
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28 巻, 1 号
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  • 井水注水量が循環濾過池の水質とアユの成長に及ぼす影響
    千葉 健治
    1980 年 28 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 345×165×90cmのコンクリート水槽6面を用い, 注水1面, 循環濾過・無注水1面, 循環濾過注水併用で注水量を異にする4面という飼育条件で, それぞれ平均体重5.17gのアユ800尾を収容し6週間の飼育を行った。
    2) 循環濾過・無注水水槽では飼育開始後23~25日目に大量の死亡がおきた。循環濾過・注水併用水槽のうち, 注水量最少の水槽で第6週後半に101尾の死亡があったが, 他の水槽での死亡率は低かった。
    3) いずれの水槽でもNH4-N, NO2-N, CODなどは漸増し, 一般に注水量の少ない程高い値を示した。pH, DOは次第に低下し, 注水のみの水糟を除き, 注水量の多い程高い値を示した。
    4) 水質項目中, DOとNH4-N, CODとは負の, NH4-Nとアルカリ度, CODとは正の相関が認められた。
    5) 日間成長率は注水量の多い水槽で高い値が見られ, またDOの低下, NH4-N, CODの増加と共に, その低下が認められた。特に, DO, NH4-N, CODの平均値が, それぞれ45~55%以下, 2.0~2.5ppm以上, 3ppm以上で日間成長率の低下が著しかった。
  • 池水の循環および濾材の有無が池水の水質とアュの成長に及ぼす影響
    千葉 健治
    1980 年 28 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 345×165×90cmのコンクリート水槽6面を用い, 注水量に毎分7.9lおよび1.9lの2段階を設け, 各注水量について注水のみ, 循環併用, 循環濾過併用の3方式で, 各水槽1.85kgのアユを収容し6週間の飼育を行った。
    2) 各水槽とも前期3週間は異状なく飼育が行われたが, 後期の第5週の後半より6面中4面にエロモナス菌の感染による大量へい死がおきた。
    3) いずれの水槽でもNH4-N, NO2-N, CODなどは漸増し, またpH, DOは低下した。注水量の多い水槽は少ない水槽に比べpH, DOは高く, NH4-N, NO2-N, CODなどは低い値を示した。いずれの注水量でも循環濾過併用水槽は循環併用水槽に比べ, DOおよびNO2-Nは高く, NH4-Nは低い値を示した。Ca, SiO2, 電導度などは注水量, 循環の有無と関係なくほぼ一様の値を示した。
    4) COD, NH4-N, アルカリ度のうちの2項目相互には正の, またこれら3項目とDOとは負の相関が認められた。
    5) 前期3週間の結果では, 日間成長率は一部に例外はあるが, 注水量の多い水槽で高い値を示した。
    6) いずれの注水量でも, 日間成長率は循環濾過併用水槽が最も高く, 次いで循環併用水槽, 注水のみの水槽の順となった。
    7) 日間成長率および餌料効率はCOD, アルカリ度とは負の, DOとは正の相関が認められた。この中, DOが最も強く影響しているものと推定された。
    8) 注水量が少なくても循環濾過を併用すると, 注水量の不足を補い, より高い日間成長率を示す場合があった。
  • 換水方式が循環濾過水槽の水質及びアュの成長に及ぼす影響
    千葉 健治
    1980 年 28 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 345×165×90cmのコンクリート水槽4面を用い, 注水のみ, 循環濾過・無注水, 循環濾過・注水併用 (注水量1l/min, 1回の換水に要する時間47.4時間) および循環濾過・換水併用 (換水頻度2日に1回) の4飼育条件で, 各水槽に平均6.65gのアユ350尾を収容し6週間飼育を行った。
    2) 循環濾過・無注水水槽では, 飼育開始後12日目から死亡魚の多発が認められ, 14日目に飼育を打切った。他3水槽は6週間飼育が可能であった。
    3) 循環濾過・無注水水槽ではNH4-N, NO2-N, COD等が急増し, 同一時期では常に最高を示し, 注水のみの水槽ではこれらの項目は最低を示した。循環濾過・注水併用および換水併用水槽ではこの中間の値を示した。
    4) 循環濾過・注水併用水槽と同換水併用水槽とを比較すると, NH4-N, NO2-N, PO4-P, CODなどは換水併用の方がはるかに高い値を示した。
    5) 循環濾過・無注水水槽を除く3水槽の水質中, NH4-NとCOD, また一時期のNH4-Nとアルカリ度に正の相関が認められた。
    6) 日間成長率および餌料効率は注水のみの水槽で最も高い値を示した。しかし平均体重は注水のみ, 循環濾過・注水併用および同換水併用の3水槽間で有意差は認められなかった。
    7) 本実験の注水のみ, 循環濾過・注水併用および同換水併用の3水槽で観測された水質変動の範囲内では日間成長率および餌料効率に大きな影響はないものと考えられた。
  • 注水量, 通気量が循環濾過水槽の水質とヨーロッパウナギの成長に及ぼす影響
    千葉 健治
    1980 年 28 巻 1 号 p. 26-38
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 345×165×90cmのコンクリート水槽6面を用い, 2面は注水のみ, 4面は注水と循環濾過を併用し, 注水量を1~4l/min, 通気量を32~350l/minの範囲で変えて組み合わせた条件下でヨーロッパウナギ3.3kgを収容し, 6週間飼育を実施した。
    2) 注水 (4l/min) のみで循環濾過を併用せず, 通気量の少ない (32l/min) 水槽で, 増重率, 餌料効率が他水槽より劣るのが認められた。他の水槽間に大きな差は認められなかった。
    3) 飼育期間中, いずれの水槽でもpH, DOは次第に低下し, NH4-N, NO2-N, PO4-P, CODなどは増大した。注水量の少ない水槽程NH4-Nなどの増大は著しかった。但しNO2-N, PO4-Pは注水のみの水槽では増加しなかった。アルカリ度の変動はあるが, 増加又は減少の明確な傾向は認められなかった。その他Ca, Mg, Cl, SiO2などは大きくは変動しなかった。
    4) DOには日周変動が認められ, 給餌後DOは低下し, 1.5~3時間後に最低を示し, その後徐々に回復した。その低下は通気量の少ない程大であった。
    5) 濾過槽・注水によるNH4-Nの酸化, 希釈能力, 魚よりのNH4-N分泌排泄量の推定から, 飼育水中のNH4-Nの変動は残餌, 糞等の分解に由来するNH4-Nによって大きく影響される考えられた。
    6) 増重率, 餌料効率の劣った注水のみの水槽ではNH4-N等の蓄積は認められず, むしろ飼育後期のDOが他水槽より低く50~60%であったことが, その成績の劣る主要な原因と推定された。
  • 温室加温養鰻池の水質と生産について
    千葉 健治
    1980 年 28 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1) 愛知県豊橋市神野新田町および渥美郡渥美町の温室加温養鰻池について昭和52年6月~53年11月の間調査を行った。水源用井水および池水については水質分析を, また池面積, 換水量, 放養量, 給餌量等については聞取調査を実施した。
    2) 両地区とも井水のNH4-N, NO2-N, PO4-Pなどは低い値を示したが, 神野新田地区の井水のCl, SO4, Ca, Mgなどは渥美地区に比較し高かった。池水は井水に比べ, 両地区ともNH4-N, NO2-N, PO4-PおよびCODなどは著しく高くなり, それぞれの最高は26.40, 6.00, 4.73, 10.24ppmであった。またCa, Mg, SO4などは井水と大差がなかった。この水質は従来の止水池に比べNH4-N, NO2-N, PO4-Pなどは著しく高い値である。
    3) 池水のDOの日周変化はあるが, 植物プランクトンは多くなく, 酸素の溶入は大部分水車によるため最高値も過飽和とならず, また最低値も著しくは低下せず, その変動幅は小さかった。
    4) 設置されている水車の延馬力数と池面積, 放養量との間にはほぼ直線関係が認められた。池面積y (m2) と馬力数x (HP) との間にはy=105.3x+78.9の, また放養量y (kg) と馬力数x (HP) との間にはy=755.5x+242.3の回帰式が推定された。
    5) 温室加温養鰻池では異常に高いNH4-N, NO2-N, PO4-Pが観測されたが, 餌付き, 餌料効率, 成長などに大きな影響はないものと考えられた。
  • 温室加温養鰻池の酸素及びアンモニア態窒素の収支について
    千葉 健治
    1980 年 28 巻 1 号 p. 46-55
    発行日: 1980/05/25
    公開日: 2010/03/09
    ジャーナル フリー
    1.温室加温養鰻池で溶存酸素の増加に関する要因として, (1) 水車を含め空中からの溶入, (2) 池水中の植物プランクトンの光合成, (3) 注水による搬入, また減少にかかわる要因として, (1) ウナギの呼吸による消費, (2) 池水中の細菌・動植物プランクトンによる消費, (3) 底泥による消費, (4) 排水による搬出を考え, それぞれの要因による供給, 消費の大きさを測定し, 一部については推定し, 池中での酸素収支の解明を試みた。
    2.同様にNH4-Nの増加に関する要因として, (1) ウナギの分泌排泄, (2) 底泥よりの溶出, また減少に関連する要因として, (1) 池水中の細菌・植物プランクトン等の異化同化, (2) 換水による搬出を考え, それぞれの要因による供給, 除去の大きさを測定又は推定し, 池中でのNH4-N収支の解明を試みた。
    3.酸素消費に関しては, 収容密度が高いためウナギによる酸素消費の割合が最大で, 密度によって変動するが76.08~86.41%と推定され, 池水, 底泥による消費の割合はそれぞれ7.55~13.29%, 3.21~5.66%と小さかった。また光合成, 注水による搬入もその供給割合は著しく小さくそれぞれ7.17~12.62%, 1.34~2.36%で, ほとんどが水車匠よる溶入と考えられ, 水車1HP当たり大略2.07~3.93m3/dayの溶入があるものと推定された。
    4.池水中へのNH4-Hの供給割合は, ウナギの収容密度の高いことにより, その分泌排泄によるものがほとんどで全体の94.18~97.01%を占め, 底泥からの溶出は僅かであった。また細菌・植物プランクトンによる異化・同化量は小さく, 大部分が換水により除去されることになる。しかし収支の平衡が保たれるとして推定した池水のNH4-N濃度と養魚池での観測値とが一致せず, 他の形でのN除去もありうると考えられた。
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