水産増殖
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原子力発電所の温排水が生物に与える影響*
―高浜原子力発電所の取・排水路における動物プランクトンの活性変化―
安田 徹
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1981 年 29 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

1977年11月7日から1980年8月2日までの間, 高浜原子力発電所の取・排水路でバケツ採水により動物プランクトンを採集して, その直後7回, 24時間放置後8回, 計15回にわたり運動状態から活性を比較・観察し, 排水路における死亡率の推定を試みた。
また, 一部の代表種を3回にわたり染色して生死判定を行い, 死亡率の地点別変化状況を調べ下記の知見を得た。
(1) 採集直後の試料を検討すると1978年4月下旬の幼体類の1例を除き, 排水路での死亡率がいずれも高いと結論され, 更に排水路末端に向うにつれて死亡率の増加が認められた。この傾向は染色によって判定した場合でも同様な結果が得られた。
(2) 動物プランクトンの取水路から排水路末端での死亡率増加はおよそ12.7~38.7%, 平均23.8%と推定された。
(3) 採集直後の運動状態と染色による判定結果からみて排水路末端に向うにつれて死亡率が増加すること, 更に昇温させない状態と昇温した状態との死亡率の変化状況からも判断して, 上記の死亡率増加は, 昇温よりも主として攪拌・混合等による機械的ショックが, より強く働いていると推定された。
(4) 24時間放置して飼育した場合では, 特に夏~秋期には取・排水路での影響が採集直後に観察した場合より不明瞭となることがあるので, この方法は不適当と考えられた。

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