水産増殖
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アメリカ合衆国における, ネマトーダ, ワムシ給餌によるクルマエビ属移入種の種苗生産
赤嶺 安彦
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1983 年 31 巻 4 号 p. 204-213

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抄録

1981年2月~6月の間, アメリカ合衆国フロリダ州パナマシティのマリフアームズ社において, 30m3と120m3の室内水槽を用いて, 従来のアルテミア・ノープリウスに加えて活きワムシ, 冷凍ネマトーダを給餌したエビ種苗生産を行い, 次の結果を得た。
1.中米, 北米からフロリダ州パナマシティに空輸したP.vannameiおよびP.staylirostrisのノープリウスを飼育試験に供した。
2.基礎試験として6lの海水に300尾づつのノープリウスを収容してポストラーバ1期まで飼育した結果では, 冷凍ネマトーダの給餌で飼育した歩留りは93%, 活きワムシと冷凍ネマトーダの併用で90%, 従来の飼育方法であるアルテミア・ノープリウスの給餌で87%であった。
3.エビ種苗の大量生産では, 先ず原則的にゾエア期の餌として純粋培養したスケレトネマを投与したあと, 冷凍ネマトーダ又は活きワムシの何れか一方を与えた場合, 双方を併用した場合の飼育結果を見ると, ノープリウスからポストラーバ1期までの歩留りは, 冷凍ネマトーダの5槽で79%, 両者併用13槽で65%, 活きワムシの4槽で60%であった。
4.ネマトーダの培地として, 煮沸したオートミール+寒天, なまのコットンシードミール, なまのコーンミール, の3種を使用したが, これらのうちなまコーンミールによる培養が最適のように思われた。収獲したネマトーダにコーンミールが混入してもエビ幼生には悪影響がなく, むしろ幼生がこれを摂取するのが観察された。
5.煮沸したオートミール+寒天の培地による培養では, 収獲時にネマトーダに寒天物質が混入し, これを給餌した4槽の飼育結果はノープリウスからポストラーバ1期までの歩留りが24%と低い値を示した。これは寒天物質が幼生の体に附着したことによるものと考えられる。
6.従来どおりアルテミア・ノープリウスを給餌した27槽の飼育結果は, ノープリウスからポストラーバ1期までの歩留り4.8%で, これに活きワムシ, 冷凍ネマトーダを単独ないし併用給餌した22槽での歩留りは67%を示し, 複数飼料投与による総合効果が見られた。
7.中南米太平洋沿岸種のP.vannameiと, P.stylirostrisの種苗生産の結果は, 総生産尾数29.85×106尾であった。種類別では前者が20.38×106尾, 後者が9.47×106尾であった。また, 空輸したノープリウスから収獲までの通算歩留りは, 前者が45%, 後者が41%であった.

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